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久保憲司のロック・エンサイクロペディア

マック・デマルコ『ディス・オールド・ドッグ』 ・・・「細野(晴臣)さんを尊敬している」という発言を聴いた時、僕は彼のやっていることがすべて分かった

 

すきっ歯のアーティストと言えばマック・デマルコとジェフ・ミルズ。

ジェフ・ミルズがすきっ歯!!!!ってびっくりする人も多いと思いますが、ジェフがすきっ歯って思わないですよね。でもマックはすきっ歯がとっても似合います。

 

 

すきっ歯でかっこいいアーティストと言えばクラッシュのポール・シムノン、美しい人と言ったらヴァネッサ・パラディ、僕の息子も子供の頃はすきっ歯っで羨ましいなと思ってたら、大人になったら普通の歯並びになりました。本人にとってはすきっ歯は嫌でしょうけど、僕はいいなと思ってました。

デヴィッド・ボウイも歯並びが悪いですけど、死ぬまで直さなかったですよね。偉いなと思います。そのままの姿がアーティストなのです。ジェフも「直そうかなとも思うけど、俺じゃなくなるしな」と言っておりました。今はもう直しているかもしれませんけどね、クラシックの人たちとやってますからね。どうなんでしょう。

気のふれたようなルックス、それがマック・デマルコです。気のふれたピザ配達の兄ちゃんみたいな。すきっ歯だけで気がふれているように思うなんて、完全に偏見の塊でいけないことなんですけどね。しかもイギリスではブリクトン・アカデミー(5千人)を二日ソールド・アウトするビッグ・アーティストとなりました。そんなビッグ・アーティストになったマック・デマルコ、完全に気が狂ったようなキャラクターで勝負していくのかなと思っていたら、3枚目のアルバム『ディス・オールド・ドッグ』は細野晴臣さんの名盤『ホソノ・ハウス』のような感じがする。ライブではまだパンツ一丁で歌ったりしてますが。ジョン・レノンとも言えるけど、優しく歌う感じが細野さんそっくりなのである。

 

 

日本のロック史の中で、ベスト10に入るであろうアルバム『HOSONO HOUSE』、なぜこのアルバムが素晴らしいかというのを説明するのはとっても難しい。マック・デマルコは「細野さんは色んな音楽をやっているから素晴らしい」と言うが、『HOSONO HOUSE』、そしてそれに続く『トロピカル・ダンディー』『泰安洋行』『はらいそ』三部作(この三部作もベスト10に入るから細野さんの作品だけで、ベスト10がうまってしまいます)というのは、デヴィッド・ボウイの三部作と同じくらいとんでもないことをやっている。そして、ボウイの『レッツ・ダンス』のようにイエロー・マジック・オーケストラで世界に飛び出していった細野さん、何なんでしょうね。

本人はきついドラッグをやってしまって精神的にとっても不安定で、それを克服するために気持ちを楽にしよう、楽にしようとしていたら、すごいナチュラル・ハイがやってきて、それが『トロピカル・ダンディー』の背景にはあると答えておられるが、すごいすよね。何がすごいのか、ドラッグやったからすごいのか。僕が書くとそうとらえられてしまいますが、忌野清志郎さんが「細野さんが住んでいた狭山の米軍ハウスに行ったら自分らより不良でびっくりした」と言ったはりましたが、細野さんが

 「幻想の世界に住んでいるというのはだんだんとわかってきたんです。つまり、ヒッピー・ブームの中で、音楽的なブームとしてカントリーに移行していって、なんかわからないままコミューンみたいのを作ってね、現実にはあり得ないようなアメリカ村みたいなとこに住んで、まわりにはミュージシャンとかアーティストが住んで、ニュー・ファミリーみたいなのを結成したりしてね、ほんわかした中で生活していたのが、だんだんと崩壊しつつあったんですね。そういう不安感というのはありました」

 

と『細野晴臣インタビュー THE ENDLESS TALKING』で語っていたように『HOSONO HOUSE』にはそうした不安感、孤独がある。そして、それは僕にはマック・デマルコの『ディス・オールド・ドッグ』と同じものを感じる。

人はこういう音楽をアシッド・フォークと呼ぶ。

 

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