久保憲司のロック・エンサイクロペディア

Jeff Beck 『ライブ・ワイアー』 : ジェフ・ベックはギターを壊さないけれど、毎回自分のプレイを壊していってしまうかのよう [世界のロック記憶遺産100]

 

ジェフ・ベック、不思議な人です。

 

 

このロック史を作った名ギター・リフ100に一つも出てこないんですけど、ロック・ギターを代表するギターリストです。

近いうちに僕もこの映像を完コピしてユーチューブにあげたいです。ロック評論家を目指すならこれくらい出来ないとダメだなと思っている今日この頃です。一曲目のチェット・アトキンスが一番難しいですね。メジャー7thのコードなんか押さえたことないので出だしから下手くそやなというのがバレてしまいます。ロック・ギターはチェット・アトキンスから始まっているというのはなかなか考え深いです。本当はレスポールから何でしょうけどね。いや、チャーリー・クリスチャン、ジャンゴ・ラインハルトでしょうか。

ジャンゴ・ラインハルトの伝記映画『永遠のジャンゴ』は見られたでしょうか?映画的には別に何も盛り上がらないですが、見ると元気になれました。本当に指が3本しか使えないようになっても、お客さんを感動させるプレイが出来るんだという事実をドーンと見せつけられました。

ジプシーのジャンゴ・ラインハルトはキャラバン(移動馬車)が火事になった時にその火を消そうとして大やけどを負って右手の薬指と小指2本が動かなくなるのです。人さ指と中指と動かない薬指と小指で、チャーリー・パーカーも真っ青な鳥が空を飛ぶような、いつまでも聴いていられる、聞いているだけで心がウキウキして、踊りたくなるようなフレーズを永遠と弾き続けるのです。

なんか自分もやれそうな気がするんです。そしてテクニックじゃなく、スイングすることが一番大事なんじゃないかと気づくのです。

アメリカ人じゃないのに、ジャズ史に残る人物となっているのは日本人にも勇気を与えてくれます。俺たちにもやれば出来るんじゃないかと。人種なんか関係ないと。これがこの映画の一番のポイントで、これを否定するナチという敵もちゃんといますし、この部分に絞ればもっと面白くなったような気もするんですが、これを映画にするのは説明的で難しいですかね。

ジプシーというのがいいです。ジプシーと言っちゃいけないんですけど、僕はロマと言うよりジプシーと言う方が好きなんで、すいません。僕はジャズ、ブルース、ロックンロールのルーツはジプシー・ミュージックだと思っているので、もしくはこれらの音楽を媒介した人がジプシーだと思っているのでジプシーのジャンゴ・ラインハルトがジャズ・ギターの頂点にいるというのは嬉しいのです。

ジェフ・ベックの話をしようとして、ジャンゴ・ラインハルトの話をしてすいません。でも二人はなんか似ているような気がするのです。二人のギターを聴いていて思うのは自由と言うことです。チャーリー・パーカーのサックスと一緒ですね。チャーリー・パーカーのニックネーム、バードの由来、鳥のように自由に飛んでいるような演奏。

だからいつまでも聴いていられる。ジェフ・ベック、コードとか弾かないですからね。ピックも使わなくなって、もう俺は自由だと言っているような気がして仕方がありません、彼のライブを見ていると最後はギターなんか放り投げてしまうじゃないかという気がしてしまいます。

たぶん、これが僕たちがジミ・ヘンドリックスやピート・タウンゼントがギターを壊してしまうのを見て感動してしまう理由だと思うのです。

当時はギターを壊すことに批判的な人もいたんです。信じられないでしょう。今はミュージシャンがギターを壊しても誰も批判しないですよね。みんなお前の気持ち分かるという感じになります。

ジェフ・ベックはギターを壊さないですけど、彼のプレイを聴いていたら、毎回自分のプレイを壊していってしまうかのようです。

そんな彼の一番のプレイが楽しめるのがヤン・ハマー・グループとやったライブ盤『ライブ・ワイアー』だと僕は思うのです。

 

 

このアルバムのスタジオ盤というかオリジナルの『ワイヤード』を聴くべきだと思うのですが、今ジャズ・ロックというか、フュージョンを聴いてもそれがどんな意味があるのか解りにくいと思うのです。

本当はジョン・マクラフリン率いるマハヴィシュヌ・オーケストラの『黙示録 Apocalypse』のジャズ・ロックに感動したジェフ・ベックが『黙示録 Apocalypse』のプロデューサーだったジョージ・マーティンに仕事を依頼した『ブロウ・バイ・ブロウ』『ワイアード』と順に聴くべきなんでしょうが。今は『ライブ・ワイアー』さえ聴いてもらえれば、それで十分なような気がします。

 

 

 

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