久保憲司のロック・エンサイクロペディア

音楽のことなんてよくわからないのに、ジミー・ペイジとジェフ・ベックはどちらがギターがうまいかで、中学生の僕らは殴り合い寸前の話合いをしていた [ロックの闘争(3)] (久保憲司)

 

前回から続く

 

昔『ロックの闘争』という電子書籍を出していたのですが、ネット上からなくなっているので、6回くらいに分けてここにもアップして行きたいと思います。昔読んだことあると思う人はすいません、でも、今読むとまた感覚も違うかもしれません、自分のロック史を語りながら、ロックがどのようにカウンター・カルチャーだったかということを書いた連載です。自分で言うのもなんでが、結構面白いと思います。


 

 

ロックをめぐる中学生的日常

そんな僕に、これはかっこいいんじゃないかと思わせてくれたのが、デヴィッド・ボウイだ。当時、オシャレな世界ではデヴィッド・ボウイがかっこいいということになっていて、デヴィッド・ボウイというのはかっこいいという情報はテレビからもなんとなく入ってくるようになり、そういう情報をキャッチした僕は、デヴィッド・ボウイはかっこいいんだと思うようになっていったのである。80年代で言うとバウ・ワウ・ワウがオシャレと言われ、流行っていった感じ。今でいうとレディ・ガガみたいなもんだ。

 

 

当時は洋楽の番組なんかほとんどなく、関西ではJUNというファッション・ブランドが提供する「ソウル・トレイン」(注.1) くらいで、それを眠い目を擦りながら見ていた。当時のJUNはELPかキング・クリムゾンだったかをCMソングに使っていて、グレッグ・レイクの声がすごくかっこよく僕の耳に入ってきた。プログレもなんとなく耳に入ってきてはいたのだが、僕にはまだまだプログレは高尚すぎて、自分のお金を使う気にはならなかった。こういう情報は、僕の実家のある大阪の千林のレコード屋さん「ミドー楽器」から仕入れていたが、あれだけいろんな音楽を聞かせてもらって世話になった店のお兄さんの名前を忘れてしまった。本当にもうしわけない。

ソウルとかファンクのことはよくわからなかったのだが、「ソウル・トレイン」ではみんなが踊るのがかっこよかった。これも、今から考えると子供が一生懸命ダンス番組見て腰を動かしているんだから、踊りを習わせればよかったような気がするのだが、うちの親はそういうことに気づかなかったようだ。それを考えると今の親は偉いよね。子供が「エグザイル好き」と言えばダンス教室に通わせ、小さい時からランニングマンや、ロジャー・ラビット(注.2)をやっているのは、本当にうらやましいと思う。

さてデヴィッド・ボウイである。ボウイが「ソウル・トレイン」に出たのだ。

 

 

『ダイヤモンド・ドッグス』の曲をやりに。今から考えるとコケイン中毒でガリガリに痩せていてファッションはフィリー・ソウルというか、黒人のピンプ(注.3)みたいな格好だったのだが、むちゃくちゃかっこいいと思った。たぶんボウイはかっこいいという情報はファッション誌から入っていたから、僕もかっこいいと思ったのだろう。でも、『an an』なんかのファッション誌がかっこいいと言っていたのは、山本寛斎(注.4)の服を着ていたジギー・スターダストの頃のボウイなんだけどね。この頃のボウイのインタビューを読むと「モッズ以降のイギリスのムーブメントで、本当に意味があるのはノーザン・ソウル(注.5)である」と言っていて、あのスタイルはノーザン・ソウルと関係するのかなと僕は思うのだ。

その頃の僕はそんな事はわからず、お金を貯めて『ダイヤモンド・ドッグズ』を買った。これが、僕が自分で買って一番最初に好きになったレコードだ。このアルバムには、その頃僕が好きになりだしたSFの要素などがいっぱいあり、音を聞きながら、ジャケットを眺めているのもとっても楽しかった。

SFとは言っても、僕が好きだったのはトム・ゴドウィン(注.6)の『宇宙の漂流者』などの子供向けで、ボウイが目指したのは管理された社会を痛烈に批判したジョージ・オーウェル、その後ハードSFと呼ばれるウィリアム・バロウズやJG・バラードの世界。外宇宙じゃなく内宇宙、完全に頭がおかしくなったような世界。管理社会への恐怖をつづったバロウズのSF、それはゲイとドラッグ中毒からくる被害妄想のような世界だったが、今読むとその強迫神経症のような妄想はあながち現実から外れているとも言えない。バロウズが言っていた情報戦争を、僕たちは戦わなくてはならないのだ。

ボウイの音楽に夢中になっていた頃、まわりでもベイ・シティ・ローラーズ(注.7)やキッスなんかに夢中になり始めた人たちが現われた。いや、人たちというのはウソで、一人だけだった。しかも女の子。男の子はまだロックに夢中じゃなかったような気がする。いや、男の子でロックに興味を持っているのもいたにはいたが、それは掃除の時にほうきを持って舌をベロベロだしたり、火を噴くマネをするような興味の持ち方で、僕は自分のロックへの興味を、もっと高尚なものと思っていたのだ。今で言うと「俺、レディオヘッド好きだから」みたいな感じか。

 

 

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tags: David Bowie Jeff Beck Led Zeppelin

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