久保憲司のロック・エンサイクロペディア

その頃の日本のバンドはヤバかった -リザードを見てバンドを始める  [ロックの闘争(4)] (久保憲司)

 

前回から続く

昔『ロックの闘争』という電子書籍を出していたのですが、ネット上からなくなっているので、6回くらいに分けてここにもアップして行きたいと思います。昔読んだことあると思う人はすいません、でも、今読むとまた感覚も違うかもしれません、自分のロック史を語りながら、ロックがどのようにカウンター・カルチャーだったかということを書いた連載です。自分で言うのもなんでが、結構面白いと思います。

 

 

ロックをめぐる馬鹿馬鹿しいパフォーマンス

 こんなアホな友達とバンドをやりだしたりもするのだが、僕は沖縄のコンディション・グリーン(注.1)というバンドに興味を持ち始める。たしか『ロッキンf』(注.2)に載っていたのだと思う。その記事には、生きたニワトリを食いちぎりながらすさまじい音を出すハード・ロック・バンドがいると書かれていた。しかも、彼らが京大西部講堂に来ると。

今から考えるとニワトリのクビをひきちぎるって、アリス・クーパーだよね。コンディション・グリーンはフランク・ザッパにも影響されていたそうですから、そういうのもマネしてたのだろう。そして、沖縄からわざわざ京大西部講堂(注.3)にライブしに来たのも、彼らが尊敬するフランク・ザッパが西部講堂で伝説のライブをした(注.4)からではないかと僕は思う。どういう伝説かというと、フランク・ザッパは京大西部講堂のステージでウンコをして、それを食ったと。ホンマ、アホな伝説である。 そんなの絶対ウソ。 でもそういうのがまかり通っていた時代なのだ。

当時スタッフをやっていた人に聞いたのだが、バンドがステージに行く前に「ハッパ吸うか」と聞いたら、「そんなん吸ったらちゃんと演奏できなくなるからいらん」と言われたと。昔は日本人の方が外人よりもワイルドだったのだ。というか、あのフランク・ザッパの高度な演奏はトンでたらできないよね。でも、僕らが子供の頃は外人ミュージシャンはむちゃをするという噂があった。ドアーズのジム・モリソンがステージでマスタべーションするとか、そんなのやっているわけないじゃない。やっていたら、そういう写真残っているはず。僕ならちゃんと撮ってますよ。

 しかし、元スロッビング・グリッスル(注.5)のクリス&コージーのコージーが、白いタキシードを着てステージでオナニーしているのは、はじめは「演技かな? しょうもないことするなあ」と思ってみてたら、だんだんアソコが濡れてきてびっくりしたことがあった。あと、バットホール・サーファーズ(注.6)のギビー・ハインズがアソコを押さえてモジモジしているから、何をしているんだろうと思ってたら、だんだんアソコが濡れてきたので、びっくりしたら、それはオシッコだった。今から思えばよく考えられているんだよね。ステージでオシッコすると何がかっこ悪いって、小便小僧のようにピューって出ちゃう。女の子の方が座ってできるんで、かっこいいのだ。非常階段(注.7)の人がよくやっていたけど、あれはサマになる。だからギビー・ハインズが手でチンコを押さえてやるやり方は、オシッコが出血するように滲んできてかっこいいのである。もしステージでオシッコをしようと思っている人は、このやり方をマネしてみたらいいと思う。しかしステージでオシッコするとライブハウスは出入り禁止になる。非常階段はちゃんとビニールをしいてやっていたが、でも、こうなってくると、やるぞというのがわかって面白くなくなったりもするよね。

フェイス・ノー・モア(注.8)のマイク・パットンはライブ中、お客の帽子を借りて、そこにオシッコをしていた。マイク・パットンもオシッコをシャーッとはしなかった。小便小僧になったらかっこ悪いというのをよく分かっていたのだろう。帽子で隠しながらしていた。帽子にたまったオシッコをどうするんだろうと思っていたら、そのオシッコを飲み干した。これはなかなかであった。

 でも一番の注目は、空になったその帽子を借りたお客に返すのか、そしてその帽子を、いくらファンとはいえその人はかぶり直すのかということであった。固唾を飲んで見守っていると。マイク・パットンはステージ袖にその帽子を投げたのだった。「正解!」と僕は思わず叫びんだ。ファンの子をも一安心ですよね。絶対「よかったー」と思ってたと思う。

このライブは93年の中野サンプラザだったんですが、フェイス・ノー・モアが出入り禁止になったかどうか、すごく気になる。一応こぼしてはいないので、ステージは汚れていない。だから怒られなかったと思うのだが、どうだろう。

 

リザードを見て、バンドを始める

 京大西部講堂という場所は、学生運動の生き残りが運営していて何か知らないけどヤバいという情報があったので、僕は生まれて始めてコンサートというものに行くことにした。危険な所には行きたいと思う性分なのだ。しかもこのコンサート、京大西部講堂の名物、大晦日のコンサート(注.9)でオールナイトだった。僕はそこで、自分もバンドをしたいと思わせるバンドに出会うのだ。それがまだ紅蜥蜴と呼ばれていた頃のリザード(注.10)である。

もうみなさんもなんとなく分かっていると思うが、僕はディープ・パープルやレッド・ツェッペリン、キッスといったハード・ロック、キング・クリムゾンなどのプログレとかが好きなわけではなく、デヴィッド・ボウイとかドアーズ、ニューヨーク・ドールズといった、キャンプというかグラマラスなバンドが好きなのだ。紅蜥蜴はまさにそういうバンドだったのである。そして、バンド名を紅蜥蜴からリザードに変えようとしていたのは、このバンドが音楽雑誌にぼつぼつ名前が出るようになっていたパンクという新しい音楽をやろうとしていたからなのだ。それはそれはかっこいいバンドだった。西部講堂にはコンディション・グリーンを見に行ったのだが、もうコンディション・グリーンのことなんかどうでもよくなってしまった。

 紅蜥蜴時代の音源も買えるが、やっぱりリザードとなってからのアルバム『リザード』(注.11)がかっこいい。よかったら聞いてみてください。ロンドン録音で、プロデューサーはストラングラーズのジャン・ジャック・バーネルだ。音はポスト・パンクと言っていいんじゃないだろうか。ジャーマン・プログレの匂いもプンプンする。ワカさんのベースはビンビンで、シンセの音も斬新だった。でも何が感動したって、新しいことを始めるぜというその勢いでである。アルバム1曲目「NEW KIDS IN THE CITY」の歌詞から、そのエネルギーが伝わってきます。

 

子どもたちが遊んでいる
裏通りの陽だまりで
きらめく風に吹かれながら
子どもたちが駆けていく

そして未来が呼んでいる
お前の未来が呼んでいる
子どもたちは空を見上げて
来るべき時を待っている

新しい子どもたちが生まれ
新しいヴィジョンが生まれる
新しいモラルが作られ
新しい世界が生まれる

New kids In the city
Good bye old World
Au Revoir

古い殻をぶち壊せ
古い世界をぶち壊せ

Change !

 

うわっー、素晴らしい歌詞です。子供のときはこの歌詞の素晴らしさにぜんぜん気づいていなかったが、今はすごく分かる。まさにパンクという新しいムーブメントに連動するかのように 、新しい夜明けが来そうだよね。

 モモヨさんは『幼年期の終わり』(注.12)に影響されたと自分のブログで書いていたが、僕にとってはパンクという、新しい音楽というか思想を謳歌するような歌詞、自分が変わって行くのを祝福しているようなものを感じる。今はね。当時はそんなこといっさい感じていなかった。サイバーパンクな感じもある。リザードのセカンド・アルバムは『BABYLONROCKER』というが、ウィリアム・ギブソンの『ニューロマンサー』(注.13)にはバビロン・ロッカーという人物というか、単語が出てくる。リザードがアルバムを出したのは『ニューロマンサー』が出版される5年も前の話なんだけど。本当に先見性があった。

『ニューロマンサー』がリリースされて27年、映画『マトリックス』などを経て、僕はようやくヴァーチャル・リアリティの世界がどういうものか分かってきたのだが、そういえばこの頃はサイバネティックスという言葉も流行りだして、ブライアン・イーノ(注.14)がよくサイバネティックス、サイバネティックスって言っていた。

今ウィキペディアで調べると、サイバネティックス(注.15)って、「通信工学と制御工学を融合し、生理学、機械工学、システム工学を統一的に扱うことを意図して作られた学問」って書いてある。しかし当時は、イーノがテレビにビデオカメラを向けると無限に画像がフィードバックする作品をつくっていて、それが現代のサイケデリックみたいでかっこよかったのだが、そういうのをサイバネティックスだと思っていた。イーノはその作品で、テレビの置き方を変えて使っていて、たったそれだけだったのだけど、すごく趣味がよかった。テレビは横長だが、それを縦に置く。それだけでかっこよかったのだ。

 パンクの次に生まれたポスト・パンク(注.16)という音楽は、全部これだ。ちょっと変えるだけで、それが新しく、かっこいいものになる。そういう音楽だった。今もこういう音楽が通用するかというと、しない。でも、今の音楽はこうした、コロンブスの卵的発想で生まれたポスト・パンクの音楽を新しく焼き直しているだけなんだけどね。これはどういう現象なんだろう。

リザードに戻る。『リザード』のアルバムは「少年はもはや世界にとけ込み、ひとつの意味が明白となった、彼の王国は近い」と歌われる「キングダム」で終わります。完全なるコンセプト・アルバムです。ザ・フーの『トミー』『ザ・ストーン・ローゼズ』『リザード』…すごいアルバムは全部コンセプトアルバムなのだろうか。セックス・ピストルズの『勝手にしやがれ!!』なんか究極のコンセプト・アルバムだよね。あれで全部終わっちゃったのだから。

 

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tags: LISARD PON コンディション・グリーン 紅蜥蜴

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