久保憲司のロック・エンサイクロペディア

『This Is America』Childish Gambino…“ノー・ミュージック、ノー・ライフ”だと?音楽なんかで救われるわけないだろう?踊っていても救いはない。とにかく逃げるしかないんだ (久保憲司)

 

 

チャイルディッシュ・ガンビーノの「ディス・イズ・アメリカ」が話題です。

 

 

自分の感想を言わせてもらうなら、「ビヨンセなんかもファック・オフだ」と言っているところがかっこいいなと思いました。ゴスペル・シンガーというか、黒人教会のコーラス隊をマシンガンで撃ち殺すシーンです。

ビヨンセの6作目『レモネード』の黒人の女性の未来は南部(トラディショナル)にあると思わせるようなイメージ(とっても暗いんですけどね。詳しいことはこれについての過去の記事を読んでみてください)、コーチェラのライブでのあのマーチング・バンドに黒人、アメリカの未来があるかのような活気あふれるステージなどに対するチャイルディッシュ・ガンビーノの「そんな生ぬるいこと言ってんじゃないよ、ぶっ殺すぞ」というメッセージだと思ったのです。

要するに救いがないということです。

Pファンクのことを書いた時に、60年代にブラック・パワーで燃え上がった黒人たちは結局どこにも行けず、70年代の黒人は宇宙に救いを求めるしかなかった。それがドクター・フランケンシュタイン、Pファンクだと、書いたのですが、今のアメリカの黒人は宇宙にも助けを求めることが出来ないんだというのが「ディス・イズ・アメリカ」のPVのオチです。「暗闇をとにかく走るしかないんだ」とチャイルディッシュ・ガンビーノは言っているのです。

暗闇を目をひんむいて走るチャイルディッシュ・ガンビーノの姿は日本の漫画、アニメのシーンのようでしたね。日本もアメリカも一緒なんですよ。

「ディス・イズ・アメリカ」は踊っていても救いはないんだ、とにかく逃げるしかないんだというPVです。日本で言ったら、「“ノー・ミュージック、ノー・ライフ”だとふざけんじゃないよ、音楽なんかで救われるわけないだろう、髪の毛金髪にしてもなんも変わんないよ、ぶっ殺す」というわけです。金髪は関係ないですね。箭内さんに怒られます。

話がズレますが、Pファンクのパーラメントという名前はタバコの銘柄からきてるんですね。パーラメント=国会、すごい名前だなと思ってたらジョージ・クリントンの伝記「ファンクはつらいよ」で、彼が音楽をやりだし頃、ドゥ・ワップ時代、「グループ名を考える時は選択肢は限られており、ヴォーカル・グループの大半は、鳥、車、煙草から名前を取っていた。俺は煙草の銘柄を選んだが、喫煙者ではなかった」と出てきてびっくりしました。

自伝にはジョージ・クリントンが子供の頃(1945年頃でしょうか)の話も出てきます。

“アスパラガスを摘み、野原を駆け回ったことを覚えている。リチャードとロバートという白人の少年がふたりおり、俺と弟(俺とは一歳違い)のボビー・レイを釣りに連れて行ってくれたり、俺たちに農業のやり方を教えてくれたりした。また彼らからは、クー・クラックス・クラン(以下KKK)がシーツを被り、馬に乗ってやってくる夜には、家の中にいるように聞かされた”

ジョージ・クリントンは黒人をリンチするKKKが夜中ウロつく頃に子供時代を育ったのに、グループ名はタバコの銘柄、能天気な時代だ(そんな時代だから過激なことを言えるわけはないというのはよく理解してますが)。いや、僕が言いたいのは今の時代はそんなKKKが夜中走り回っていた頃よりもよくなっているのか!?ということなのだ。

 

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