久保憲司のロック・エンサイクロペディア

クイーン『ボヘミアン・ラプソディ』 ・・・殺した男はフレディ・マーキュリー。自分はゲイだから、マイノリティの自分が嫌だから。でもこれはメンバー全部に言えるんですよ

 

クイーンの映画というかフレディ・マーキュリーの映画『ボヘミアン・ラプソディ』大ヒットで嬉しいかぎりです。当時のクイーンを知っている人だけじゃなく、若い人まで感動しているところを見ると、クイーンは日本人に合っている気がします。

 

 

僕はデモを作っている時の4人が本当に楽しそうで、スタジオで色んな変な音を作ろうと悪戦苦闘している姿はビートルズのようで、やっぱクイーンはビートルズが好きだったんだなというのがあらためて認識出来ました。

初期の頃のクイーンは次なるレッド・ツェッペリンになろうとしているのかなと思っていたのですが、ゾンビーズ、10CCもそうですが、コーラスを何重にも重ねたりするのはビートルズを越えようとするところから始まっているんでしょうね。

ブライアン・メイの一人コーラスのようなギターってどうやっているのかなと思っていたら、ハーモナイザーを使っていたんですね。この時期にもうハーモナイザーがあったのかとびっくりです。

デヴィッド・ボウイが『ロウ』を録音しようとしている時にトニー・ヴィスコンティが「ハーモナイザーという機械は時間を逆行出来るんだよ」とボウイとイーノに説明していて、二人が「ワー、すごい」と騒いでいた逸話があるんですけど、その時にトニー・ヴィスコンティはハーモナイザーはイギリスにまだ2台しかないと言ってたんですけど、どういうことなんでしょうね。

ハーモナイザーが時間を逆行する、どういうこっちゃと思っていたんですけど、なんか3人はハーモナイザーをドラムにかけてゲートリバーブみたいなことをしてたのかなと思います。ゲートリバーブという言葉たまに耳にすると思いますが、ネットで調べると「深めにかけたリバーブノイズゲートを使って意図的に残響の途中で切り落とすエフェクトの事。スネアドラムにかける事が多い」と出てきますが、みなさん何のためにそんなことやっていたかご存知ですか、簡単に言うと売れるレコードというのはとにかくドラム・サウンドがデカい音が売れるんです。でもドラムをデカくするとその余韻までデカくなって、タイトではなくなる。だから、その余韻(エコー)をシュパーンと切るようなことを考えたというのがゲートリバーブです。ボウイたちはそう言うのをシュパーン、戻るみたいな感じで考えてたんでしょう。戻ってないけど。

イエスの「ラウンドアバウト」の出だしのピアノの逆回転の音が衝撃だったんでしょうね。ビートルズの「ア・デイ・イン・ザ・ライフ」のあの歴史的とされた最後のピアノの音を逆回転させただけで、それを超える鳥肌を作ったんだから、みなさん色んな実験をしていたのがよく分かります。イエスの確かに小さな音から大きくなって時間を遡ってますしね。時間を遡ると言う言葉に敏感に反応するの分かりますけど。

クイーンもそうやって色んなことやってをやってたんだなというのを本当は見れないのに、見れたのが嬉しかったです。

ドラムのロジャー・ティラーのスネアーやフロアー・タムにビールをブチまけて、叩くと水しぶきが巻き起こるというロック・ドラムの王道テクニックもロジャーが一番最初にやったんだぞというメッセージを出していたのもよかったです。映画の中ではただのスケコマシ、ロジャーの作った「アイム・イン・ラブ・ウィズ・カー」を「なんで車へのラブ・ソングやねん」「お前の彼女車か」とバカにされまくり、傑作「アンダー・プレッシャー」をやる時は「こんなドラム・ループの曲やれるか」と批判する役をやらされてましたが、あのライブ・エイドでも頂点を極めた「レディオ・ガガ」をホテルの部屋に打ち込み機材持ち込んで作ったのロジャー・ティラーなのに、何でそんなアホな役回りばかりさせられているんだろうと思いました。クイーンの唯一のパンク曲「シアー・ハート・アタック」を作ったのもロジャーなのに。ロジャーだけが新しい世代のことを気にしていた、そんな人なのに、当時ロック界で一番カッコよかった人なのに。「アイム・イン・ラブ・ウィズ・カー」今聴くと、ピンク・フロイドやろうとしてたんだということに気づかされます。

映画の中ではそんなロジャー・ティラーよりももっとひどい扱いをされていたジョン・ディーコン、「アンダー・プレッシャー」の時はカッコよかったですけど、いるのがわからないような存在、まさにベーシストというギャグ、ジョン・ディーコンもフレディ・マーキュリーの名ラブ・ソング「ラブ・オブ・マイ・ライフ」と同格のラブ・ソング、奥さんへの愛を歌った「ユア・マイ・ベスト・フレンド」もあるのに。

ここまで書いて、レッド・ツェッペリンの「天国への階段」と並ぶロック史に残る名曲「ボヘミアン・ラプソディ」がどういう歌か分かられたと思いますが、映画の中でもちゃんと説明してますよね。レッド・ツェッペリンの「天国への階段」はこちらで説明してますので、これ読んでください。

ロック界の中ではボヘミアンとされていた4人に対するラプソディの歌なんです。歌の中に突然登場するガリレオは天文学者を目指していたブライアン・メイ、高慢な臆病者スカラムチョはジョン・ディーコン、反権力の貴族フィガロはロジャー・ティラーのことでしょう。そして、人を殺した男はフレディ・マーキュリー、なぜ殺したかかというと、自分はゲイだから、人種的にマイノリティの自分が嫌だから、その通りでしょう。でもこれはメンバー全部に言えるんですよ。売れるか売れないかどうかのバンドに全てをかけて、一緒に戦ってきた自分たち、4人で全てを信じて、戦ってきた自分たちへのラプソディなのです。

 

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