バズコックス 「エヴァー・フォーリン・イン・ラブ」 ・・・これからみんなで燃えようぜと思っているときに彼らが歌っていたことは退屈、不毛だったのです
バズコックスのピート・シェリーが亡くなりました。「ピートは同窓生だ。彼はパンクが流行る前からそこにいた。」セックス・ピストルズ、スティーヴ・ジョーンズの追悼の言葉がグッときます。
バズコックスのピート・シェリーとハワード・ディヴォートがいなければパンクは爆発しなかったかもしれないのです。二人がイギリスの音楽雑誌NMEに載ったセックス・ピストルズの初ライブの小さな記事を読んで、ロンドンにピストルズを見に行き、マンチェスターに彼らを呼ばなかったら、パンクはロンドンだけのクズ音楽と呼ばれ燃え尽きていたかもしれないのです。
彼らが企画した2回目のセックス・ピストルズのコンサートの前座をやった時、二人以外に正式なメンバーはいなかったのです。そんな彼らがインディペンダント・レーベルを立ち上げ作った「スパイラル・スクラッチ EP」はDIY(ドゥ・イット・ユアセルフ)の鏡のように今もその輝きを失っていないのです。
山塚アイちゃんがノイズからパンクに先祖返りしようとボアダムズを結成した時、アイちゃんの頭に流れていたのはバズコックスだったと思います。ボアダムズというバンド名はこのEPに入っている「ボーダム」からきているのです。映画「ゴーストワールド」で主人公の少女がパンクとバカにされて、「私のパンクはバズコックスなどのクラシック・パンクなのよ」と叫ぶのと同じです。パンクとは髪を立てて、革ジャン着て、鎖をジャラジャラいわせて歩くことじゃなく、バズコックスやワイヤーのように自分たちにはどこにもいる場所がないと体を縮こませているのがパンクなのです。
セックス・ピストルズのジョン・ライドンもそうでしたが、パンクが始まってこれからみんなで燃えようぜと思っているときに彼らが歌っていたことは退屈だったのです。
俺は言いたいこと言うよ
思いついたことを言う
俺たちには順番なんか回ってこない
真面目に生きているよ ちゃんと列に並んでいる俺のことを知っているだろう
俺がバカなふりしてるのも
このシーン(パンク)のことも分かってる。
とっても平凡
退屈、退屈、退屈これから映画に行くけど
感動もしないだろう
電話がかかってくることを待ってるけど
電話、電話、電話俺の後ろには何もないんだ
全部経験してるんだ
そんなの俺の未来じゃないだろ
よく分かってるんだこの素晴らしい旅が
どこでもない所から始まって
どこでもない所に戻るって
よく分かってるんだ俺のことを知っているだろう
俺がバカなふりしてるのも
このシーン(パンク)のことも分かってる。
とっても平凡だよね
退屈、退屈、退屈「ボーダム」
彼らが歌っていたのは不毛です。そしてハワード・ディヴォートが抜けてからのバズコックスはビートルズに負けないメロディで人生で一番の不毛=愛のことを歌っていきます。
多分、その一番の名作が「エヴァー・フォーリン・イン・ラブ」です。ゴー・ゴーズの「アワー・リップス・アー・シールド」と並ぶパンクのゲイ・アンセムです。
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