久保憲司のロック・エンサイクロペディア

フリクション『百年』・・・ヒッピーがマリファナをやって何もしなかったことを笑うのがパンク。古いロックおじさんが「ドラッグやらないとロック出来ないぜ」と言っていたのをバカにした世代

 

電気グルーヴのピエール瀧の事件は大変ショックだった。いつまでコケインやマリファナをやっただけで、こんなにも酷い扱いを受けないといけないのか。

ネット上の意見もマリファナは良いけど、コケインをやっているのは依存症という意見にもびっくらこいた。コケインは精神的依存はあっても肉体的依存は少ないからセレブのドラッグと言われているのに。

要するに真のジャンキーからは「コケインなどパーティー・ドラッグだ」とバカにされているわけです。海外だとヘロイン中毒になってこそ、本当のジャンキーだという風潮があります。

日本も一緒ですね。僕が子供の頃は「ヘロイン中毒になってこそ本当のドラッグ愛好家だ」「シャブ中なんかカッコ悪いで、ヘロイン中毒から生きて帰ってきた人間だけが本当のジャンキーだ」とアホな先輩たちがよく言っていました。要するにウィリアム・バロウズになれというわけです。

こう言うアホな人たちのことをドラマにしたのが、アーヴィン・ウェルシュの小説『トレインスポッティング』です。

アーヴィン・ウェルシュがヘロイン中毒に成った頃はパンクという新しいヤング・カルチャーが流行っていて、ピース、ピースで動脈硬化を起こしていたヒッピー・カルチャーに退屈した若者たちが、パンクという新しいムーブメントに触れてバンドやったり、アートやったり色々と新しいことをやりだしているのに、ヘロインをやって無駄な人生を送った自分たちを笑うために書かれた小説です。

ヒッピーたちがマリファナをやって何もしなかったことを笑うのがパンクでした。ぶっ飛んでいるヒマなんか俺たちにはない、やることが一杯あるんだというのがパンクの一番の思想でした。

僕もこれに感化された若者の一人で、古いロックおじさんが「ドラッグやらないとロック出来ないぜ」と言っていたのをバカにした世代です。

この考えからストレート・エッジというパンクにとって一番大事な思想が生まれたわけです。

ストレート・エッジが生まれた本当の背景は、アンチ・ドラッグだったパンクの中から、シド・ヴィシャスのようにヘロインに溺れ死ぬ若者たちがたくさん出てきたからです。たくさんの死人を見て、“俺たちはドラッグやらない、お酒も飲まない、タバコも吸わない、コーヒーも飲まない、タバスコもダメ、刺激物は一切やらない”という思想が生まれたのです。

 

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