久保憲司のロック・エンサイクロペディア

レディオヘッド『キッドA』・・・次の時代の音、リズム、雰囲気を決めたアルバム『キッドA』を全曲解説

 

 

2017年にレディオヘッドがラナ・デル・レイの「ゲット・フリー」が「クリープ」に似ていると訴えたという古いニュースを見てびっくりしました。こんなの訴えたらラナ・デル・レイに「何言っているの、あんただって、「クリープ」はホリーズの「ザ・エアー・ザット・アイ・ブリース」からパクったでしょう、なんで私が訴えらないといけないのよ」と裁判所で言われそうなのに。

なんとレディオヘッド側は「訴えてないよ」とコメントしているそうです。ズッコケました。ラナ・デル・レイが新作のアルバムの宣伝の為に使ったネタだったみたいです。

そんなことするなよと言いたいんですけど、もしレディオヘッドが本当に訴えて、勝ってたら面白いなと。

レディオヘッドの「クリープ」はホリーズの「ザ・エアー・ザット・アイ・ブリース」のコード進行を元に、90年代から現在につながる新しいロックのイメージを作ったわけです。ラナ・デル・レイはそのレディオヘッドが作り上げた空気感で自分の曲を作ったと。本人もそれはちゃんと認めていて、「レディオヘッドに権利の30%とか40%をあげるのは問題ないんだけど、彼らは100%よこせと言ってきたので、それは了承できないわ」と答えています。

ラナ・デル・レイはヒップホップ的な手法で曲を作ったと言うことでしょう。

面白いので、この3曲聴き比べてみてください。コード進行をパクるのは盗作とは言われないんです。そこにどうメロディを載せるかで、盗作か盗作でないか見分けられるのです。

今調べたら、レディオヘッド、「ザ・エアー・ザット・アイ・ブリース」の曲を作ったアルバート・ハモンドとマイク・ヘイゼルウッドに訴えられていて、ちゃんと認めていました。レディオヘッドが「クリープ」を封印したのはこう言う経緯もあるんでしょうね。

ちょっと腹たちますよね。「クリープ」の元ネタは「ザ・エアー・ザット・アイ・ブリース」だと思いますが、後半の展開が全然違いますからね、後半に始まるあのカチッというクランチ・ギターに「クリープ」の全てがあると言っていい、あのギターの音、その後の展開に僕らはお金を払っていたわけです。何ですかね、あの音は、自分を殺すような、でもここから全てが始まるような。まさに新しい時代を作った曲を「盗作だ」と言われるのは封印したくなるような屈辱だと僕は思うのです。

「ザ・エアー・ザット・アイ・ブリース」を作ったアルバート・ハモンドの息子って、ストーロクスのギターのアルバート・ハモンドJRなんです。彼らがバンドを始めた時、機材を買うお金は父アルバート・ハモンドのクレジットカードを限界まで使ってそろえたんです。お父さんが「「クリープ」の印税入ってくるから、このクレジットカード限界まで使っていいいよ」と渡していたら面白いですよね。クリープの印税がいつから入るようになったのか調べてないんですけど、ストーロクスの初期の活動資金に「クリープ」のお金が使われていたとしたら、なんか考え深いものがあります。00年代を代表したバンド、低迷していたロックを復活させたバンドの資金がレディオヘッドから出ていたとしたら笑ってしまいます。

こう言う事件があるとレディオヘッドも影響ということには気を使っていくことになったでしょうね。そんなアルバムがレディオヘッドの問題作『キッドA』なのではないでしょうか。『OKコンピューター』が時代の空気を変えたとしたら、『キッドA』は次の時代の音、リズム、雰囲気を決めたアルバムでした。全曲解説いってみましょう。

 

1.「エヴリシング・イン・イッツ・ライト・プレイス」

イントロのエレピを聴くだけでもこのアルバムを買う価値がある。今はストリーミングなんで誰でも簡単にすぐ聴けちゃうんですけど。時代が終わったようで、始まるような不思議な浮遊感に包まれる。どんなことが歌われているんだろうと初めてチェックしたのですが、キッドAがどういう意味なのかで、違ってきてしまいますよね。普通の人はキッドAというとキッド・アーナーキー、キッドAMON(悪魔)とか感じるんでしょうかね。僕は多分、少年Aでいいと思うんですけど。

とある少年が
全て正しい場所に収まる。
昨日、レモンをかじって起きた
二つのことが僕の頭の中にある。
すべてが正しい場所に
君が言おうとしていることは何?
何を言おうとしたのか、
全て

キッド・アモンだったら、漫画『デビルマン』の最後のシーンを歌にしているようですけどね。ジャケットは氷の世界ですし。

『デビルマン』の最後のシーンというのは、人間の世界の前には、神様が作った悪魔が地球を支配していたのですが、神様は自分で作ったくせに醜い悪魔を嫌い、全滅させようとした。それを知った神様の子(飛鳥了)は悪魔と共に神様に戦いを挑み勝利する。次なる戦いに備え彼らは250万年間の眠りについた。悪魔たちが眠りから覚めると、地球は人間たちに支配されていた。飛鳥了と悪魔たちは人間全滅計画を始める、その第一段階として、人間と悪魔を合体させて、人間に恐怖を植え付け、人間同士を戦わせようとする。この作戦の裏には人間不動明に恋をした飛鳥了が、デビルマンとなった不動明と次なる時代を一緒に生きたいという思いがあった。しかし不動明は悪魔と合体した人間たちとデビルマン軍団を作り、悪魔と最終戦争を行う。飛鳥了は悪魔が人間を全滅させようとしたことはかって神が悪魔にしたことと同じだと気づくが、時遅し、不動明は悪魔との戦いに破れ死んでしまう。誰もいなくなった世界で一人取り残された飛鳥涼は全てを話そうとするが、時遅く、不動明は死んでしまっていた。

まさに「エヴリシング・イン・イッツ・ライト・プレイス」の歌詞そのままですね。

深読みしすぎですかね。次はどんなことを歌っているのでしょう。

 

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