久保憲司のロック・エンサイクロペディア

パフ・ダディ『アイル・ビー・ミシッング・ユー』・・・誰もがパフ・ダディと同じ経験をしているから、みんなそれに感動して何百万枚もCDを買ったわけです

 

ハトが豆鉄砲を食らったような顔のパフ・ダディことショーン・コムズ、あまり彼のことは知らない。というか大ネタ使いであんまり好きじゃなかった。レーベル名もバッド・ボーイとかダサくないかと思っていた。次のイーストのリーダーがこいつかと思うと疑問でした。

結局、イーストというかアメリカというか、世界のヒップホップを制覇したのは、Jay-zたち元売人たちが立ち上げたロッカフェラ・レコードでした。その後は音的にはサウスが制覇しますが、レーベルを企業っぽく完成させたのはロッカフェラでした。バッド・ボーイという名前よりも名前がシャレているなと思ってました。

振り返るとロッカフェラのジギーなイメージって、バッドボーイからだと思うし、バッドボーイの金銭至上主義な感じって、ウエストのギャングスタから来てると思う。要するにヒップホップも色々と進化したなということです。

派手という意味のジギーって言葉は、デヴィッド・ボウイのジギー・スターダストから来てるのか、派手な散髪屋さんの名前にジギーという名前が多かったからなのか、どっちなんだろう。日本でいうと80年代のオシャレな美容院の代名詞がモッズ・ヘアーみたいな感じ、なんでモッズやねんw

パフ・ダディによく会ったのはミレニアム前夜頃のイビサやマイアミのDJブースだった。会ったことがあると言ってもブースに「何でパフ・ダディがいるねん」と思うくらいでしたが。正確な年は覚えていないのだが、その頃はエミネムも「エクスタシー最高」とか言い出していて、ヒップホップがダンス・ミュージックに接近しそうな時だった。

これを読んでいる人は誰も知らないと思いますが、元々はヒップホップとハウス・ミュージックは同じフロアーで鳴っていた音楽でした。

だからヒップホップがダンス・ミュージックに接近することはいいことなんですけど。それにヒップホップはダンス・ミュージックですけどね。

パフ・ダディがやろうとしてたことって、結局EDMという形で花開くわけです。パフ・ダディがやろうとしてたって書きましたが、イビサやマイアミのDJブースにいただけで、何もしなかったですけど。

パフ・ダディって流行に敏感なだけの奴と思っていたんですが、彼の大ヒット曲「アイル・ビー・ミシッング・ユー」が、相棒ビギーが殺されたことについてラップしていると知って、なんかいい奴じゃんと思ってしまったのです。

ビギーの悲惨な死はウエストとイーストの抗争の結果でした。ビーフ(抗争)自体は別にいいと思う。ヒップホップを生んだイーストが、そのパチモンのようなウエストのヒップホップに完全に負けてしまった怒りみたいなのはよく分かる。ヒップホップが生まれた時からヒップホップが大好きな僕もN.W.Aが出てきた時は「こんなのパブリック・エネミーのパチモンやん、サンプリング雑やし」と思っていました。

2パックがビギーの所によく遊びに行っていたのも、ビギーのイーストにはない本物のストリート感に憧れていたからだと思う。2パックは元々ハーレム出身だし。

そんな中で大事件が起きる。レコーディング中のビギーの所に遊びに行った2パックが何者かによってピストルで撃たれたのです。多分、売人かなんかにデカイ態度をとった2パックに、売人がキレて、ピストルで撃ったのだ。NYってそういう街なのです。なめた真似をすると本当に痛い目にあう。ロスみたいに遠くから突然マシンガンで撃つとかじゃなく、本当になめた奴にはちゃんとお礼をするのです。別に殺しはしない、俺がどういう奴か見せてやるとやる。

この事件を聞いた時、パンクの時と同じだなと思った。クリーブランド出身のデッド・ボーイズのメンバーがNYでイキっていたら、ナイフで17箇所も見ず知らずの奴に刺された。その時もNYの奴らはデッド・ボーイズの面々に「ここはクリーヴランドじゃないから、そんな態度してたらやばいよ」と忠告していた。

NYとはそういう街なのです。今はもう違うと思うけど、でも9.11の時にNYの消防士が、TVで「オサマ・ビン・ラディン、お前の顔を見たら、絶対息の根を止めてやるぜ」と普通に言っていたので、まだ基本変わっていないと思います。9.11も20年前の話ですが。

この事件の大問題はビギーが何もしなかったことです。あのエリアの顔役のようなビギーなら誰がやったかすぐに突き止められたはずです。そして、そいつに制裁をかけることも出来たと思うのですが、ビギーは街の喧嘩だよね、死ななかったしいいんじゃないと思ったくらいなのかもしれない。僕が書いたようにNYの論理で言えば舐めたことした奴は痛い目にあう“ずっと俺言ってたよね、2パック分かっただろ”くらいの軽い気持ちだったんでしょう。

それを2パックはこれはビギーが仕組んだ罠じゃないかと被害妄想になったのが、問題点だったと思います。

そして、もっと運悪く、この後2パックはラスベカスで何者かによって射殺されてしまうのです。

 

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tags: Puff Daddy パフ・ダディ

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