久保憲司のロック・エンサイクロペディア

セックス・ピストルズの『勝手にしやがれ!』全曲解説(後編) ・・・ヘロインや、右翼に暴行されたことでパラノイアみたいになる前、好きなこと言ってやるぜと作った今も語り継がれる傑作

前編より続く

 

敵をやっつけ
そいつらを地の底に落としてください
彼らの政治を混乱させ
彼らの巧妙なトリックを破り
私たちの夢を実現させてください

あなたは店で一番の商品
いつまでも私たちの女王でいてください

 

というイギリス国歌がセックス・ピストルズの「ゴッド・セイブ・ザ・クィーン」顔負けの歌だったと書いたところで、『勝手にしやがれ!』全曲解説の前半が終わったので、後半にいきたいと思います。

 

ついでですが、「君が代」の歌詞は

君が代は
千代に八千代に
さざれ石の
いわおとなりて
こけのむすまで

 

弱い。ローリング・ストーンズですか!ブルースと言えばブルースですが、あっ、その反対か、ローリング・ストーンズって、苔が生えないように転がり続けろと言う意味なのです。日本って昔からロックとは反対な存在だったんですね。「こんなんだから、日本は戦争に負けるんですよ」とネトウヨみたいなことを言ってみる。

もしあのまま本土決戦してたら日本どうなってたか知ってます?アメリカはオリンピック作戦っていうのを考えていて、サリン撒きながら、九州から皇居に向けて侵略してくる気だったんです。まさに放射能撒き散らしながら日本に上陸してきたゴジラ、そんなことやられていたら、日本どうなってたことやら。沖縄、長崎、広島、都市を空爆された人たちの前で言えないですけど、日本は見事に立ち直ったわけです。でもずっと僕たちは本当に日本は立ち直ったのかと思って生きてきているわけでしょ。あの死んでいった人たちの思いを本当にくみ取って自分たちは生きているのか、それがロックであり、芸術だと思うのです。

庵野さん、宮崎さんのアニメは「俺たちは偽善の上に立っているんだ」という所から始まっているわけです。高畑勲みたいにそんなの人間だから当たり前だろという怪物もいますが。

前回書きましたけど、イギリスのロック、パンクというのも同じなんです。「ロンドンを空爆されたのに、ヨーロッパでナチの野郎に歯向かったのは俺たちだけだろ、50万人近くが死んで、ナチをぶっ潰したのに、その後繁栄したのはドイツだろ、なんでやねん」という想いなんです。ザ・フーの『トミー』も戦争に行った旦那が、帰って来たら、奥さんが他の男と付き合っていて、その男に殺される所から始まります。それを見たトミー少年は二人から“今のは見なかった、聞こえなかった、喋っちゃダメ”と言われ三重苦になる話です。

セックス・ピストルズのジョニー・ロットンも「アイ・ワナ・ビー・ミー」でこう歌ってます。アルバムに入ってない曲なので、番外編ということで。ロック・スターにおべんちゃらを使うメディアに対する怒りの歌です。俺はアンダーグランドに生きてやるよと歌う歌ですが

 

ページをめくれば世の中が変わったって
俺は普通の奴になりたくない。もうこりごりだ
これは洗脳、教えてやるよ
奴らはお前をバカにしてるんだ
説明できないんだろ
お前はレコードを見てるだけ
お前をバカにしてんじゃない、お前になりたいだけ
第三次世界大戦を初めてくれ、そうすれば俺たちまた元気になるぜ”

                                                               「アイ・ワナ・ビー・ミー」

 

日本でも戦争になれば地位の流動化が始まって、知識人を殴れると言った赤木智弘というライターがいましたが、完全にこれですな。

結構みんなおんなじことを考えるんでしょうな、でも僕らみたいなのはいつの時代もひっぱたかれる側だと思うんですが、戦争が起こっても何も変わんなかったんじゃないみたいな。

子供の頃は『どてらい奴』やJ・G・バラードの『太陽の帝国』のように荒廃した街を自由に走り回る少年に憧れましたが。パンクって僕にはそういう存在だったのです。

 

後編行きます。

 

5曲目「プロブレムス」

この曲も自分になりたいと歌ってます。基本ラブ・ソングです。あれが欲しい、自分が何なのか分からない、何かに成りたいという中二病の彼女に、問題はお前なんだよ、俺は俺に成りたいだけと歌ってます。パンクの一番のメッセージ“9時から5時の仕事には就きたくない”と言うのが入ってます。この頃は仕事するのが搾取されると言うことだったんですけど、今は99%の人間が不要になるかもしれない未来なんです。そんな時代になった時、どんなパンクが出てくるか、僕はとっても気になりますが、そんな時代まで生きてないのはちょっと残念です。

 

 

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