久保憲司のロック・エンサイクロペディア

ナイン・インチ・ネイルズ『プリティ・ヘイト・マシーン』 ・・・トレント・レズナーとスティーヴ・ゴットリーヴという2人の天才が、時代の変化を誰よりも先に伝えた大傑作

 

このコラムを読んでくださっている方から、「ナイン・インチ・ネイルズ」はどうですかとリクエストを頂いたので書かせていただきます。

ナイン・インチ・ネイルズをミニストリーのパチモンと思っていた人間が、いまさら「ナイン・インチ・ネイルズ=トレント・レズナーは天才だ」というのはおこがましいのですが、彼はやっぱり天才だと思います。

トレント・レズナーはインダストリアル・ミュージックのプリンス(アーティストのね)です。彼の一番最初のアルバム『プリティ・ヘイト・マシーン』はニルヴァーナが『スメルズ・ライク・ティーン・スピリッツ』が売れる前に、この手の音楽で百万枚を売った大傑作なのです。

今は誰も信じないですが『プリティ・ヘイト・マシーン』は時代の変化を誰よりも先に伝えたアルバムでした。

もちろん他にもハスカー・ドゥ『ゼン・アーケイド』ピクシーズ『サーファー・ローザ』ダイナソーJr.『バグ』などありますが、『プリティ・ヘイト・マシーン』のように百万枚も売れなかった。

もちろん僕も『プリティ・ヘイト・マシーン』が出た頃はそんなこと気づいてませんでした。エクスタシーで頭がおかしくなかっていたのか、このアルバムの偉大さを全く分かっていなかったのです。この頃は、革新的な音楽はワックス・トラックスやON-Uサウンドからリリースされていたと信じていたし、『プリティ・ヘイト・マシーン』はアメリカのお子ちゃまが「俺もタックヘッドのような音楽やりたいの」と作ったチープなアルバムかと思ってました。レーベルもTVTレコーズという胡散臭そうなレーベルだったし。

TVTレコーズってなんやね? 後にトレント・レズナーを契約で縛りつけたので、よくある悪徳インディ・レーベルかと思ってたら、TVTレコーズを作ったスティーヴ・ゴットリーヴって、TVTレコーズを始める前に、TV番組のテーマ・ソングだけを集めたCD『テレヴィジョン・グレイテスト・ヒッツ』といコンピレーション・アルバムを作って大ヒットさせた人物だと知って、こいつも天才やん、『プリティ・ヘイト・マシーン』って天才と天才が作ったアルバムかと納得しました。

 

 

『テレヴィジョン・グレイテスト・ヒッツ』って、凄いですよね。経費をかけずにアイデア一発で大儲けというようなCDですよ、その儲かったお金で始めたレーベルがTVTレコーズなのです。イエール大学を卒業した天才山師の匂いがプンプンします。そんな彼がそして一番最初に契約したアーティトがトレント・レズナーだったわけです。まだあの頃の音楽シーンには金の鉱脈があったような感じでしょうね。まだITよりも音楽業界におかしな奴が集まってくるという感じだったのでしょう。

 

 

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tags: Nine Inch Nails Steve Gottlieb Trent Reznor TVT Records

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