久保憲司のロック・エンサイクロペディア

ライアン・マーフィーの新作『ハリウッド』(Netflix) 「超ハリウッド」といったらいいんでしょうか、そんな能天気さを僕は嫌いじゃないです

 

ネットフリックスなどのストリーミングが、映画の世界を制覇すると思ってたのですが『ウエストワールド』などのシーズン3を観てるとなんかしょぼくなっていて、予算が集まってないのかなと思ってしまいました。

なので大ヒットしたグリーのライアン・マーフィーの新作ハリウッドも期待せずに観ました。

出だしは美容師スケコマシ映画(酷い説明)の傑作シャンプー的な感じで、これはハリウッド・バビロン暴露話みたいな話になっていくのかと思っていたら、さすがライアン・マーフィー、若者が夢と希望を掴んでいく話に転換させていました。もちろん、LGBT問題、レイシズム、そして今回は年寄りたちの恋や挫折なども入って、『グリー』よりも(あれ、『グリー』も年寄りの恋の問題ありましたっけ?オカマは歳とった時の生活が心配なんですよ。ノンケも一緒なんだろうけど、ノンケは、自分たちは普通だと思っているからそんなことあんまり考えないんだよ)全方向カヴァーしててんこ盛りだけど、ごちゃごちゃさせない所がさすがだと思いました。

ハリウッドの舞台裏のお話といえば、ロバート・アルトマン『ザ・プレイヤー』ウッディ・アレン『セレブリティ』(こちらハリウッドじゃなく、マンハッタンですが)のようにシニカルに描く作品が多いんですが、『ハリウッド』は観て行くうちに、これはクエンティン・タランティーノのワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッドと同じスタイル、もしこうなってたらよかったのにという願望で映画にオチをつける映画と同じだなと気づきました。夢のある歴史修整主義、これはもう一つ別のパラレル・ワールドのハリウッドの話だと思いました。

『ジャンゴ』『イングロリアス・バスターズ』などタランティーノの最近の作品はみんなこれですよね。

僕はこのスタイル大好きです。ハリウッド的なんですけど、それを超えた荒唐無稽な純粋さがあります。見ていて楽しくなってくるのです。

どうなるんだろうじゃなく、そのゾンビ殺せというあの感じです。

レイシストをぶっ殺せ、ナチを焼き殺せ、気が狂ったヒッピーをボコボコにしてやれという興奮が映画を見ている間、体と頭を気持ちよくさせるのです。

今は僕ら、奴隷商人はこの世から消える(いやまだ世界のどこかにはいるんですけど)、ナチは崩壊して、ヒットラーはピストル自殺する、頭のイカれたヒッピーは刑務所にいるって知っているわけじゃないですか、僕ら世の中どうなっていくのか知っているんですよ。

GAFA(今はマイクロソフトが復活してきてGAFAMですか)があって、コロナがあって、中国があって、アフリカがあって、世界中に問題は山済みですけど、絶対ブロック経済になんかならない、恐慌の後に世界大戦は起こらないってなんとなく分かっているじゃないでしょうか。

世界はいつか一つになるってもう知っているんですよ。もちろん過去には大恐慌があって、そして第1時、第2時世界大戦が起こりました。その時は阻止出来なかったですが、今度は阻止出来るんじゃないですか、冷戦から核戦争にならなかったように。陰謀論者の“コロナの後、恐慌になって戦争が始まる”と言う話なんかリアルじゃないですよね。恐慌にはなるかもしれませんが、もう世界対戦は始まらないでしょう。

もちろん第一次世界大戦の前もみんなそう思ってたんですけど、今はもう金本位体制じゃないですし、昔以上に世界はもっと複雑に絡み合わさっているような気がします。いやそれ以上に僕ら賢くなっているんですよ。SNSをみたら賢くなってないような気がしますが、賢くなっています。セルビアの民族主義者が民族差別に怒りオーストリアの国王を暗殺しての皇太子して、それが世界大戦になるようなことはもうないと思うんですよね。今から考えると世界大戦の発端は人種差別ですよ、レイシズムがどれだけあかんかということですね。

 

 

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