久保憲司のロック・エンサイクロペディア

「RAMONES」 ・・・このレコードを初めて聴いたDJは「こんなのゴミだ」とフリスビーのように投げ捨てた。当時誰もがノイズだと思っていた [全曲解説(1)]

 

ビートルズのデビュー・アルバム『プリーズ・プリーズ・ミー』、エルヴィス・プレスリー、リトル・リチャードなどのロックンロールのシングルと同じくらいカルチャーを変えた偉大なアルバムです。

ヴェルヴェット・アンダーグランドのデビュー・アルバム『ヴェルヴェット・アンダーグラウンド・アンド・ニコ』と同じように、このアルバムがリリースされてみんなバンドを始めたはずなのに、ヴェルヴェットのより重要視されていないアルバム。

このアルバムもビートルズのデビュー作と同じように「1、2、3、4」のカウントから始まると思っていたら、久しぶりに聴いたら、カウントから始まってなかった。ギターのノイズから始まっている。いやー普通に弾いているのですが、当時誰もがノイズだと思った。

このレコードを初めて聴いたDJは「こんなのゴミだ」とフリスビーのように投げ捨てた。でもこのレッド・ツェッペリンやT・レックスの「20th Century Boy」とも違った衝撃のギター・サウンドが、後にシューゲイザー、ドリーム・ポップと呼ばれるサウンドになったのです。

本人たちが何を考えていたのか全く分からない、いやもちろん前記したバンドのような革新的なサウンドを作ろうとしていた。ビートルズのデビュー・アルバムのようにスタジオでライブを再現しようとしたのです。

ロックの定番じゃない音で作られたこのアルバムを聴いたクラッシュのメンバーたちは自分たちのアルバムもロックの定番じゃない音を望んでエンジニアを困らせた。プロデューサーの一人クレイグ・レオンは「丹念に音を積み重ねて、当時のスタジオのテクノロジーを最大限活用した」と語っているが、全くそう感じられない。多分爆音すぎて、全てコンプレッション(圧縮)がかかったような音になったとしか思えない。それは彼らが「シンナー吸いたい」と歌っているように、ヴェルヴェットの「ホワイト・ライト・ホワイト・ヒート」の音のように気が狂ったジャンキーが「この音最高だよね」と言うような常軌を逸した音にしか聴こえない。

その通り当時の日本の輸入盤屋ではラモーンズのレコードはジャケットの角をカットされ、もしくはノコギリで一本線を入れられのが(これはアメリカで廃盤という意味で、多分商品として置いておくと税金がかかってしまうので、これはもう商品じゃないですよと、廃棄品ですよという証を付けられた)、500円で売られていたのです。でもその中にこのデビュー・アルバムはなく、みんなこのアルバムさえ買っておけばいいと思っていたのでしょう。ラモーンズのアルバムが「全部ヤバいんじゃないの」と評価されるのはCDでラモーンズのベスト盤『ラモーンズ・マニア』が1988年にリリースされるまで時間を必要としたのです。

ラモーンズのことを書くといつまでも書いていられるので、そろそろ全曲解説にいきたいのですが、最後にジャケットについて。ビートルズのデビュー・アルバムのように彼らもこちらを向いているが、ビートルズみたいに上から見下ろしていない。僕たちと同じ位置で、いや僕らよりも下にいるかのように、ゴミためのようにそこにいる。今だったらカラスよけネットをかけられているような存在です。そしてビートルズのように笑っていない。そして負け犬らしく撮っているカメラマンをバカにしているようにギターのジョニーは分からないようにファック・オフのサインを見せている。

ロック・ギターを変えたエリック・クラプトンの『ブルース・ブレイカーズ・ウイズ・エリック・クラプトン』(通称ビーノ・アルバム)のようにくだないロック写真に抗議するように撮影中ずっと漫画を読んでいたエリック・クラプトンのように頑固とした思いがあるわけではなく、まさにいじめられっ子が殴られないように分からないように小さく意思表示しているのもまさにパンク。

こんな負け犬のような人たちを見て、セックス・ピストルズのジョニー・ライドンはこいつらNYのギャングだろと思ったのだろう、ラモーンズ初のイギリス・ツアーで裏口に回って恐る恐る「俺、セックス・ピストルズのジョニー・ロットン、入れてくれるかな」と聞いて、ラモーンズの楽屋での儀式であるションベン入りビールを飲まされた。普通みんなこれを飲むと「なんじゃこのビール、マズいな」と吹き出すそうだが、緊張していたジョニーはチビチビ最後まで飲んで、メンバーの方がこいつ病気にならないかと心配したそうです。

僕はこの話を聞いてから、どんなバンドでも楽屋で飲み物をもらわないようにしている。

これこそパンクとしか言いようがない。ここから全てが始まったのです。

 

それではミニマルに全曲解説にいきます。

 

1.「ブリッツクリーグ・バップ」

不良からの襲撃をナチの電撃作戦と例えて歌ういじめられっ子の歌。スクール・バスで後ろに座った不良たちが、前に座っている真面目な子を、普通前に乗っている子から降りていくのがマナーなのに、不良たちは一番後ろに座っているのに、降りる時は誰よりも先に降りて、降りる時に前に座っている奴らの頭を電撃(叩いて)いく。アメリカの映画でよく見るやつですね。イギリスの不良はわからんように後ろか髪の毛にガムをつけたり、ツバをたらしたりするんですけどね。陰湿ですね。

多分この曲の元ネタはスウィートの「ボールルーム・ブリッツ」ですね。「ボールルーム・ブリッツ」はダンス大会で、壁の花となっている女の子に、電撃作戦のように「踊りませんか」と声をかけにいく歌です。本当はスウィートのようなポップなグラム・バンドを目指したんでしょうけど、とんでもないことになったんでしょうね。ヴォーカルのジョーイの頭の中では自分たちの音はスウィートみたいな最高のポップ・ミュージックのように聴こえていたような気がします。バンドを結成して嬉しくなったジョーイはNYドールズのデヴィッド・ヨハンセンに自分たちのリハーサルを見に来てよと何回も誘って、ついに彼らの演奏を聴きにきたデヴィッドは冷酷にも「お前ら他の仕事探した方がいいぞ」って告げるのです。NYドールズの何倍も息の長いバンドになったんだからですから「悪いこと言った」と反省しているそうですが。

 

2.「ビート・オン・ザ・ブラット」

 

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