久保憲司のロック・エンサイクロペディア

The Libertines “Time For Heroes” デモでいつも略奪が起こるとこの歌がずっと流れています。 今の僕らの歌だと思っています

 

アメリカが怒っている。いや、世界が怒っている。

やっと60年代の公民権運動の時のように世界中がアメリカの警察による黒人差別に対してジャスティス(公正)を求め出したのです。

60年代、ビートルズなどのイギリスのバンドは、アメリカの南部をツアーした時、黒人の席と白人の席が分かれていることに抗議しました。

ビートルズの「ブラックバード」は、ポールが公民権運動への支援を人には分からないように歌った歌です。ポールにはビートルズは政治を歌わないという思いがあったからです。

じゃジョン・レノンの「レボリューション」はどうなんだよと思われるかもしれませんが、あれは“革命に暴力が使われるなら、俺はその政治運動には参加しないよ”と歌われているので、政治ではないとメンバーの間で了解がとれたのでしょう。

ビートルズのすごいところは4人の許可がとれないと何も出来ない超民主的なバンドだったのです。一応リーダーはジョン・レノンだったのですが、民主主義という思想を徹底したバンドでした。だから解散したんでしょうけどね。リーダーが独裁者でも解散しますけど。

60年代にはまだ本当にうまく機能していなかった民主主義という思想をちゃんと実践したバンドなんです。本当に機能しているのかどうかみんな疑問に持ったから、学生運動が盛んだったわけです。ビートルズはその気分をちゃんと実践したバンドだったわけです。だからカウンター・カルチャーを先導したバンドと思われているわけです。

そんなビートルズの汚点はポールが作った「ゲット・バック」が移民のパキスタン人は出て行けという歌だったことです。ビートルズ は政治は歌わないという意味で、元いた場所に戻ろうとメッセージだけを残して「ゲット・バック」という曲に変えたのだと思います。

音楽に政治を持ち込むなと言う人がいますが、60年代にはそうだったわけです。それをみんな変えてきたわけです。ビートルズの解散の原因の一つでもあるでしょう。音楽で政治をやりたい人とやりたくない人がいたから、じゃ解散だなと。

「ゲット・バック」の元のアイデアの曲は、ポールのアート関係のリベラルな人間から、「あれはあかんよ」と言われたんだと思います。

「ブラックバード」を作ったポールがとんでもない曲を作るなと思うのですが、あの頃のイギリス人は、移民流入を激しく非難し、人種隔離法を提唱した保守党のイノック・パウエルの“血の川の演説”に感化された人が多かったのです。エリック・クラプトンの有名な人種差別発言のMCもこの演説に感化されていたからです。

どんな演説かと言いますと、“イギリスという国はたくさんの血が流れて作られている。でも移民(植民地の人)はその血を流していないんだから、イギリス人じゃない”と言う内容です。ツッコミ所満載の演説なんですけど、今の日本もこういう演説に感化される人は多いでしょうね。ネトウヨがハマっているのはそういうことです。

どんな人でも簡単にバカな理屈にコロッと騙されてしまうわけです。

この頃のイギリスやヨーロッパで何があったかと言いますと、戦後の供給不足で好景気だったわけです。日本も一緒です。で何が起こったかと言いますと、人手不足になったわけです。でイギリス、ヨーロッパはその人手不足を自国民で解決しようとせず、同じ言葉を喋れる元植民地の人たちで解決しようとしたのです。

日本の場合はその人たちは共産主義、軍事独裁の国の人たちになってしまっていたので、労働力として使えなかったわけです。で何をしたかというと日本の田舎から高いお金を払って集団就職してもらうようにしたのです。これで日本人の給料は上がっていったわけです。でイギリス、ヨーロッパは人手不足が解消し、供給がそれほど必要なくなった時に、移民問題が残りました。多分日本が移民問題を抱えなかったのは、ただの偶然です。日本もヨーロッパやイギリスみたいなことが出来ていたらそうしていたはずです。そして同じ問題を抱えていたでしょう。

今また人材不足に悩んでいる日本は自国民を教育せず、高い給料を払うより、他の国から安い労働力を持ってくる方が得だからと海外から人を入れる事を考えてます。

日本、イギリス、ヨーロッパ、アメリカなどの先進国の経済界の考えなんだと思います。そんなんだから僕らの最低賃金はなかなか上がらないわけです。

みんなこういう不満があるわけです。今回のブラック・ライブズ・マターの周りで略奪が起きてしまっているのはこういう理由があるからです。

だから今のデモは昔のデモとちょっと違った感じになってしまうのです。一言でいうと複雑です。こんな簡単な言葉で片付けていいのかと思いますが。

しかし希望はあって、今回のブラック・ライブズ・マターには#MeToo運動の成功の影響があります。人種差別と同じようにずっと僕たちの問題であったセクシャル・ハラスメントが#MeToo運動によって大きな転換をした事はみんなの大きな希望となってます。この成功がたくさんの人に力を与えているんだと思います。SNS上が黒くなっているのを見ながら僕は思ってました。

 

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