久保憲司のロック・エンサイクロペディア

ローリング・ストーンズ『ホンキー・トンク・ウィメン』 馬鹿な白人女の歌なんです。アメリカの白人はホンキートンク・カントリーという音楽があったことも忘れてしまいましたが

 

ニガーって日本語で書いてもそんなに怒られないからいいですね。

いや、よくないか。

ニガーなんて言葉、絶対言っちゃだめと思ってたのに、ニュー・ジャック・スウィングのテディー・ライリーのユニット、ガイが来日した時、彼らが「ニガー」と呼び合っていたのを聴いて、思わずテディー・ライリーに「ニ、ニ、ニ…なんて言葉使っていいの?」と聴いてしまいました。1988年くらいの話ですかね。

テディー・ライリーは優しく説明してくれました。「ブラザーみたいな感じで使っているんだよ」みたいなことを教えてくれたと思うのですが、僕はパニックになっていて、「僕が使ってもいいのか?」「いつ頃からそういう風に使い出したのか?」「誰が?どのエリアで?」などもっと詳しく聴けばよかったんですけど、パニックになってしまって訊けませんでした。

「ニガー」って言葉を僕が発してたら、「黒人だけがニガーって言えるの」ってパシッとどつかれてたんですかね。

2010年代の黒人のオタク(うち一人はレズビアン)の子供たちが90年代の黄金のヒップホップ時代にハマっているという映画『DOPE/ドープ!』のネタです。

白人の友達が黒人になろうと「ニガー」って言葉を使うとレズビアンの子が条件反射でバシッと白人を叩いて笑うと、白人の子が「酷いな、仲間になろうとニガーって言ってるだけじゃん」と言って、またバシッと叩かれるという。

ニガーって言葉が形骸化しているというギャグなんですけど、そうそう、チャイルデッシュ・ガンビーノことドナルド・グローヴァーの『アトランタ』では、白人ディスク・ジョッキーが黒人になりたく「ニガー」って言いそうになるのを、主人公たちがお前にはその言葉は絶対言わせねぇみたいな目をして睨むのを察知した白人ディスク・ジョッキーが口ごもるというギャグをやってました。

ウエスト・コーストと南部の空気感の違いを表していて面白いです。

ニガーって言葉がローリング・ストーンズの「ホンキー・トンク・ウィメン」みたいに使われる日が来るんですかね。

もう誰もホンキーが黒人が白人をバカにする時に使う差別用語って誰も知らないですよね。そうなんですよ、ホンキー・トンク・ウィメンって、馬鹿な白人女という歌なんです。知ってました?

 

続きを読む

(残り 2364文字/全文: 3306文字)

ユーザー登録と購読手続が完了するとお読みいただけます。

ウェブマガジンのご案内

会員の方は、ログインしてください。

tags: The Rolling Stones

« 次の記事
前の記事 »

ページ先頭へ