久保憲司のロック・エンサイクロペディア

はっぴいえんど『颱風』 ロックとは元々悪を歌う音楽でした。 世界の嫌われ者、後指刺されるものの音楽。あいつはああいう奴だからと怒られないのがロックだったはずです

はっぴいえんどのセカンド・アルバム『風街ろまん』

 

ロックとは元々悪を歌う音楽でした。

世界の嫌われ者、後指刺されるものの音楽、悪いこと歌っても、あいつはああいう奴だからと怒られないのがロックだったはずです。

はっぴいえんどのセカンド・アルバム『風街ろまん』に入っている「颱風」というヘヴィ・ブルース・ロックの名曲、今だったら完全にでアウトな歌詞です。

 

四辺は俄かにかき曇り
窓のスダレをつめたい風が
ぐらぐらゆさぶる
正午のてれびじょんの天気予報が
台風第二十三号の
接近を知らせる
空をねずみ色の雲が
ガヤガヤガヤと走り
風はどんどんどんとふいてくる
台風、台風
どどどどっとー
みんな吹き飛ばす

さあ、来い

                「颱風」

 

と甚大な被害を起こし、苦しんでいる人がいる台風を来いと願っています。

今だとコロナ来いと歌うようなもんです。

はっぴいえんどが、この歌が歌われた時も、今くらい大変な台風の被害でたくさんの人がなくなり、たくさんの家が流されてたりしていました。

多分この曲に歌われている台風23号は、1971年の台風で、戦後五番目に大きな台風で(五番が7つもありますが)、死者・行方不明者44人、住家1427棟、浸水12万棟に達しました。僕は6歳でしたが、なんとなくこの台風のことは覚えています。嘘です。でも僕の子供の頃は大阪市も足首まで水に浸かる台風が二回か三回は来たことがありました。傘を反対にして船のようにして遊んだ記憶が何回かあります。

曲を作った大瀧詠一さんがこの曲をどういう気持ちで歌っていたのか僕はよく分からない。もしかしたら、甚大な被害を及ぼすであろう台風への準備は出来たぞ、いつ来ても大丈夫だぞという歌かもしれませんが、多分僕らの世代は、怪獣映画を見ながら、ゴジラが街中を破壊するのを見て、俺の大嫌いな街、人間を焼き尽くしてくれと願った世代なので、台風にもそんな思いが込められているのかもしれません。

ロックって、そんなもんでしょう。

僕らはウルトラマンに共感するよりも、意味もなく街を壊す怪獣に共感した世代です。多分大瀧さんは台風をそんな風にとらえているんだと思います。

インタビューでは賢く「自然のことを歌うというのが、日本のロックのあるべき姿のひとつなのではないかと考えて、それがこの楽曲の誕生に繋がった」「その時に頭にあったのは風景や自然を語ることによって、俳句に個人の心情をたくした松尾芭蕉だった」と答えていますが、本当の背景はゴジラ的なものじゃないかと思います。

これがカウンター・カルチャーの本音だと思います。「代案を出せ」と言われてもそんなのないよ、ただこの世界が嫌いなだけどとしか言いようがない。

 

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