久保憲司のロック・エンサイクロペディア

CCR『雨を見たいかい』 コロナ時代の空気を歌っていてくれている歌。シンプルでファンキーなロックンロール、R&Bバンドは復活する

 

今のコロナ時代を一番いい当てている曲は日本のフォーク史というかロック史を代表する泉谷しげるの『春夏秋冬』だと思います。

 

季節のない街に生まれ
風のない丘に育ち
夢のない家を出て
愛のない人にあう

人のためによかれと思い
西から東へかけずりまわる
やっとみつけたやさしさは
いともたやすく しなびた

春をながめる余裕もなく
夏をのりきる力もなく
秋の枯葉に身をつつみ
冬に骨身をさらけ出す

今日ですべてが終わるさ
今日ですべてが変わる
今日ですべてがむくわれるさ
今日ですべてが始まるさ

 

この不朽の名曲についてどんなことを歌っているのか誰も泉谷さんに聞いてないんですかね。

当時の人は、この歌がどんなこと歌っていたのか分かっていたのか、時代の空気で分かっていたのか、とっても気になるとこです。

「春夏秋冬」は福山雅治が、アミューズのオーディションの時に歌い、デビュー後もライブやラジオなどでは歌い、バブル時代、いやバブル崩壊の歌と感じられていたのでしょうか。

残念ながら福山さんのCDでは、淡々と歌う「春夏秋冬」のオリジナルの良さを引き継がず、だんだんと盛り上げるように歌い、“なんか世の中つらいよな、でも頑張るか、頑張るぞ!みたいな歌になっていて残念です。

でも泉谷さんもこの曲を「頑張るぞ」みたいな感じで熱唱する気満々だったそうで、それをプロデューサーの加藤和彦が「そんな日本ぽいアレンジかっこ悪いよ、洋楽はあっさりと歌っているからかっこいいんだよ」とさとしたそうです。きっと泉谷さんのことだから録音してる時は「なんだよ加藤の洋楽かぶれのバカ野郎が、俺に熱唱させろ」と灰皿スタンドを蹴っていたのかもしれません。後には、「加藤の言うとおり録音したのがよかった」と言ってましたが。

今日本に必要なのは加藤和彦さんのような洋楽かぶれのプロデューサーなのかなと思います。だからBTSやブラック・ピンクが日本から出現しないで、“昨日メシ食ったか”とか、“お前と一緒にそい遂げる”みたいな演歌みたいな歌が世に貼り込んでいるんだと思います。

絶対こんな歌じゃ世界に受けないと思うんです。外人はドライですから。

韓国もK-POPの始まりとなったソテジワアイドゥル以前は演歌調で上の人を敬い、家族を愛し、国家に反抗しない歌ばかりでした。ソテジワアイドゥルはそんなの知らないよ、いや関係ない、そんなこといつまでも歌ってたら、韓国に未来はないとカウンター・カルチャーをかけたのです。ソテジワアイドゥルのアルバム『時代遺憾(シデユガム、시대유감)』は歌詞が歌詞検閲制度によって不適切だと判断され、歌詞を一切削除し発売されました。

ソテジワアイドゥルのメンバーだったヤン・ヒョンソクが作ったYGエンターテインメントがBIGBANG、BLACKPINKを売り出していくのです。

K-POPってアイドルって思われがちですが、根底にはすごい反骨精神があるんです。80年代半ばまで独裁体制の国でしたからね。もちろん今も愛国的な発言をするアイドルもいますけどね。K-POPの底辺には独裁体制時代への反発、その残骸にも怒りをずっと持っているんだと思います。

そして、勝利していっているんですよね。

『時代遺憾』から約一年後、歌詞検閲制度は廃止され、記念として歌詞入りのミニ・アルバム『時代遺憾』がリリースされたのです。

コロナの話からK-POPの話になってしまいました。本当は洋楽でコロナ時代を歌っている歌ってなんだろうなという話に持っていきたかったのに。

僕が一番今の時代の空気を歌っていてくれている歌ってCCRの『雨を見たいかい』と言う歌です。

 

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