久保憲司のロック・エンサイクロペディア

ルー・リード『トランスフォーマー』 普通じゃないと思われている感覚、その奇妙さとは何なんだろうと彼はずっと考えていたのではないでしょうか [全曲解説(後編)]

前回からつづく

 

ルー・リードの『トランスフォーマー』後編です。

 

8曲目「ワゴン・ウィール」

このアルバムの中で一番デヴィッド・ボウイぽい曲かもしれないです。というわけで、この曲はボウイが書いたと噂されていますけど、残念ながらボウイはこのアルバムに一曲も提供してないそうです。この曲と「ウォーク・オン・ザ・ワイルド・サイド」はボウイがアコギを弾いてます。

ドラッグをやって怠け者になっている歌でしょうか。よくミュージシャンでドラッグをやって練習に来ない奴がいるんですけど、迎えに行くとこんな感じの言い訳をよくしてました。

「アシッド100回やらないと本当のことが分かんないんだ」と言われたこともあります。僕はその時、そんなの一回やったら十分ちゃう、あとはテレビの再放送みたいなもんやでと思ったのですが、本当ドラッグやる人はなんでこんなスピリチュアルな感じに行くんですかね。本当のことなんか何も分かんないと思うんですけどね。ドラッグやったくらいで本当のことが分かったら、世界中神様みたいな奴ばっかりで大変ですよ。でも70年代とか90年代はそんな奴多かったような気がします。今はそんなバカはいない時代なんですかね。ドラッグなんかやらずにネットを観て、世の中が分かったような気になってるんでしょうね。うわっ、ほんまにネットってドラッグみたいなんですね。

この曲、もう一つの解釈としてはプロデューサーのボウイをバカにしたような歌かもしれません。

プロデューサーがどういう仕事かよく分かっていない人が多いんですけど、プロデューサーの一番の仕事って、レコード会社から提示された予算内でレコードを作るというのが一番の仕事なんです。

二番目の仕事って、その投資を何十倍、何百倍にするヒット曲を作るということです。

そのためには一時間何万円もするスタジオを押さえ、一時間3万円のスタジオ・ミュージシャンを何人も押さえて待機していると、本人がこないんです。どれだけ胃が痛くなる仕事か分かりますよね。

ボウイはルー・リードを尊敬してるとはいえ(本当はルー・リードがどうやって音楽を作っているのか吸収しようとしていたと思うのですが)よくそんな仕事したなと思います。

ルー・リードの気持ちは“俺は自分の中に理想の音があるのにボウイが勝手にこうやったら売れるだろうとか仕切ってやがる。クソー、でもボウイがいないとレコード会社は予算を出さないし、こんにゃろ”だったと思います。

これが後日、ボウイがルー・リードに「君が売れるためにはプロデューサーがいないとダメなんだよ」と言ったら、「誰も俺にそんな口はきかさない」と殴った顛末だと思うのです。ルー・リードがボウイを殴るって、凄すぎるでしょう。その間に入って「まあ、まあ」となだめたのがイギー・ポップって最高すぎるでしょう。ボウイは殴られてキスをしたんでしたっけ。

あとボウイはデビューしたての頃、音楽仲間に殴られて、ボウイの特徴であるあの目(片目が色が違う)になったというデマがありますが(殴られてなったのではなく先天性の病気)、殴られたのは事実です。基本ボウイって、人をムカつかせることを言う人みたいです。メールの返信とかでも最後になんか皮肉なのか、なんなのかよく分からない、人をイラっとさせるフレーズを書いているみたいです。ベネディクト・カンバーバッチが演じたシャーロック・ホームズみたいなもんでしょうか。しかし、カンバーバッチのシャーロックもよく殴られてますね。殴られるシャーロック・ホームズなんてありえないんですけど、今のイギリス人はイギリス人であると殴られるということなんでしょう。

この大事件の流れを解説しますと、ルー・リードの音楽がこういう音楽の一番の元です。それを聴いたイギー・ポップがこんな下手なヴォーカルでもレコード出せるんだと、ドラムからシンガーになることを決意して、すごいバンドを作った。この両者のような音楽を作りたいと思ったのボウイという美しい関係なんです。でもルー・リードの音楽ってキンクス、ストーンズなどのブリティッシュ・インヴェイジョンに影響されていますから、その元ネタのシーンには俺もいたんだぞ、俺の方が先輩だぞ(ボウイがミュージシャン仲間に殴られた頃ですね)という自負がボウイにはあるんでしょうね。だからこんなことになってしまったんでしょう。本当にグルグル回っている「ワゴン・ウィール」みたいな感じですね。

俺の車輪にならないかい
で、それがどんな気持ちか教えてくれ
自分がNO1だって思って生きよう
自分の人生を楽しんで生きよう
で、君が危険を楽しめるなら
そう、危険、彼女をキックして、振り向かせればいいんだ

おー神様、僕はどうしたらいいんでしょう
彼女のせいで頭がおかしくなりそうです
おー神様、僕は罪を犯しました
でも、ぼくがどこに行ってたか
僕は怠け者になってしまいました

俺の車輪にならないかい
で、それがどんな気持ちか教えてくれ
自分がNO1だって思って生きよう
自分の人生を楽しんで生きよう
で、君が危険を楽しめるなら
そう、危険、彼女をキックして、振り向かせればいいんだ

なんで起こしてくれないの
こんなに長く寝かせないで
見逃したくないんだ
なんで起こしてくれないの
お願いだから、長く寝かせないで

 

9曲目「ニュー・ヨーク・テレフォン・カンバセーション」

 

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