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岡崎「改善の余地しかない」 日本に残った山積みの課題と性癖

文=MCタツ

写真=六川則夫

最終ラインに注目してサウジアラビア戦を振り返りたい。まず良かった点をあげてみよう。良かったのはビルドアップだ。試合の立ち上がりこそ落ち着かなかったものの、15分過ぎたあたりからボール回しがスムーズになり、日本が遅攻からチャンスを作れるようになった。最終ライン3枚ともに、ボールの持ち出しとパスコントロールに優れており、見事なビルドアップを見せていた。

そして課題のほうだが、こちらは山積みと言わざる得ない。試合後最終ラインの真ん中をつとめた岡崎慎も「改善の余地しかない」と振り返った。

まず攻撃時の課題だが、もう少しカウンターアタックも何度か繰り出せればよかった。遅攻には自信を感じたが、速攻はほとんどなかった。

次に最終ラインから前線へのロングパスがことごとく通らなかったことも大きな課題となった。どちらも最終ラインだけで解決する問題ではなく前の選手との連携が必要になってくる。

この試合ではせっかく狙いをもったロングパスを出していても、前の選手とのタイミングがあっていないシーンが目立った。試合の立ち上がり15分までビルドアップが落ち着かなかった理由の一つと言っていいだろう。立ち上がりは相手が前からガンガンくることはよくある。その際、まだ立ち上がりにボールにあまり触れていない選手がいるなかで無理につなぐより、シンプルに相手の裏に蹴ったほうが相手も嫌なのだ。特に大会の初戦の試合の入りは、無理につなぐとろくなことがない。まずは相手の気持ちを折ること。せっかく前にプレスにいったのに長いボールを蹴られてしまうと、前線からプレスにいこうという前のめりの気持ちが削がれていく。ビルドアップをするための布石として長いボールは不可欠だ。

ただ、立ち上がりのロングボールは、どこをどのように狙うのか。そこは前線と後ろでしっかりプランを練っておくことが重要だ。サウジアラビア戦も当然その準備をしていたと思われるが、おそらく日本はサウジアラビアが4バックで来る想定をしていて少し混乱があったのだと思う。相手が想定と違ったフォーメーションで来たときの準備も怠ってはいけない。

そしてこの試合で一番気になったのが、前へ出ていく守備の部分である。

サウジアラビアの7番アブドゥッラフマーン・ガリーブと10番のアイマン・アル・フライフのドリブルから何度もチャンスを作っていた。この二人が最終ラインの前で受けてドリブルで突っかけると日本の最終ラインずるずるさがり、何度も危ないシーンを作られた。

7番と10番の対応についてゲームキャプテンの渡辺剛と最終ライン真ん中の岡崎慎が次のように振り返った。

渡辺剛「(サウジアラビアの)バックの選手が裏に蹴る能力もあったので、裏に蹴るモーションをされると、7番と10番が引いて下がって受けたときに前で潰せないというのが続いた。途中から自分たちが積極的に前に出て、裏はマコ(岡崎)にケアしてもらい、うまくはめられたりしたのですが、そういう改善が遅かった」

岡崎慎「シャドウのところの管理ができていなかった。一個相手が落ちたところ、(自分たちの)前のボランチのところ。後ろ3枚は流動的にできたけど、ボランチやワイドを含めたところでちゃんと守れていたかといえば、できていなかった。声でどうにかなる話じゃないかもしれないがもっと声を出さなきゃいけないところもある。自分自身もそうだが改善の余地しかない。今回の一戦で悪いところが全部出た。これはもうありがたいと思って次にいかすしかない」

日本の選手たちは7番と10番がボールを受けに降りたとき、受けた瞬間に当たってドリブルさせないことが大事だ考えていることがわかる。これはリスクヘッジを考えたとき当然である。そしてそれは試合中にある程度修正できていたのは、みなさんご覧のとおりである。

ただ、試合を見ていて気になったのは振り向かれたあとの話である。相手のドリブルに対してズルズル下がってしまうのだ。日本サッカーの性癖というか悪癖なのか。ドリブルしてくる相手に対して当たらずに下がってしまうのだ。守備の選手が欧州に移籍したときにもっとも苦労するのもこの部分である。

今大会では欧州組は呼べなかったが、彼らは今ヨーロッパでその部分を矯正されている最中だろう。ではJリーグでプレーするものはどうすればよいのか。本当に今の日本のリトリートする守り方は正義なのか。この問題は日本サッカー、あるいは日本社会にまでかかわる根深い問題なのかもしれない。

ドリブルレベルの高い選手がJリーグよりも多く出てくる大会だ。大会期間中に、この課題をどう修正するのか、注目したい。

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