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森崎和幸物語 第14章

2011年、森﨑和幸は2008年以来3年ぶりにシーズンを通して働いた。だが、それは決して、慢性疲労症候群という病気から解放されたわけではない。心身への負担を最小限にするため、取材が制限される時もあった。言葉を聞いても前向きではなく、戦う男の魂を感じることは難しい状況。

ただ、基本的には回復基調ではあったはずだ。もし、病気が最大の力をもって彼を襲っていたとしたら、ピッチには絶対に立てない。この病気は、甘くはない。彼が苦しんでいたのは、いわば後遺症。元の状態に戻るための一里塚だった。一方で、この病については根治することはほとんどないと言われている。カズは、常に何らかの症状と闘っていかねばならない宿命を負ってしまったのだ。

この年、彼はその宿命をしっかりと受け入れた。今まで、ことサッカーに関しては常に完璧を求め、日々の暮らしもサッカーのために過ごしてきた。それが時に彼自身を窮屈な空間に押し込め、ハンドルでいうところの「遊び」も生み出すことができなかったのかもしれない。

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