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森崎和幸物語 第15章

 不安は確かに存在した。

理解者であるミハイロ・ペトロヴィッチがいなくなることで、自分の体調とどう向き合えばいいのか。そもそも、理解してくれるのか。だがそこは、次の指揮官の名前を聞いて気持ちは楽になった。

森保一。森崎和幸がユースで夢を見ていた頃、広島で主軸を張っていたレジェンドが、新しい監督として戻ってきたのだ。

カズは森保一がどういう人間性をもっているのか、よくわかっていた。病気のことも必ず理解してくれることもわかっていた。実際、森保監督に森崎兄弟の症状のことを聞いた時も「普通に、自然体でやっていきます」と笑っていた。そしてその言葉に嘘がなかったことは、その後の5年間で完璧に証明してみせた。

カズが気になっていたのは、また違うことだ。

「僕がデビューし、試合に出たことで、森保さんは出場機会を失っていたんです。そこを僕は勝手に気にしていた」

(残り 1892文字/全文: 2262文字)

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