都並敏史、11年ぶりの監督復帰。その先に見据えるJへの旅路(J論)

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青山敏弘物語〜逆境〜 第四章/リバウンド・メンタリティ

 

へーっ、いいキックをもっているな。

スーッと伸びて受け手の足下にピタリと通した50mくらいのサイドチェンジを見た時、そんな印象を受けたのは、確かに覚えている。2003年の夏、美作で行われた広島のキャンプに彼が参加した時だった。「オランダのボランチが出すような、鋭いサイドチェンジを出すことができる高校生は、そうはいないから」。作陽高・野村雅之監督の言葉は、僕も感じた。

「走れるし、キックも持っている。何より、シュートがすごくてさ。ウチに入っても十分にやっていける素養はあるよ」

足立修スカウト(当時※現強化部長)は当時、情熱をもってそう語っていた。

「確かに広島ユースには、有望株が多い。ボランチには(高萩)洋次郎や(高柳)一誠、(柏木)陽介らもいるしね。だけど、同じ色を持っている選手ばかりだと難しくなる。違う場所で育った選手との競争が必要なんだ」

サンフレッチェ広島強化部の高い評価を受け、青山敏弘は広島に加入した。ただ、足立スカウトが獲得の決め手としたのは、技術的なことだけではなかった。

「配球の質が高い。パスを出す息遣いなどは大人の香りがした。だけど当時のアオは身体が細かったし、スピードもない。パスだけで、プロとして食べていけるのかというと、そこは一抹の不安はあった。だが、あの『幻のゴール』で彼が見せた振る舞いが大きなポイントとなりましたね」

それは、どういうことなのか。

「ああいう苦しい状況に立った時、アオはグッと成長したんです。表情も雰囲気も変わった。凄まじい反骨心を感じたんです。リバウンド・メンタリティ。それがあれば、必ずプロでもやっていける」

ただ、その「リバウンド・メンタリティ」ってやつは、決してどんな時でも表に出てくるわけではない。人間である。沈む時もある。もう立ち上がれないともがく時もある。逆にいえば、逆境に立った時にすぐ「大丈夫」だと言ったり、すぐに切り替えたりできるのは、それは本当の「逆境」には立っていないのである。

苦しむ。苦しむ。そして苦しむ。

どん底だと思っても、そこからまた、底があるように思う。

それはネガティブだからではない。普通の感情だ。

たとえば柏好文は、韮崎高でも国士舘大でもレギュラーポジションを張っていたが、決してアンダー年代での代表に選出されていたわけでもなく、プロにも引く手あまたというわけではなかった。甲府でレギュラーを張ったものの、ポジションをFWからワイドへとコンバートさせられた。2015年、負傷離脱後に復帰してもポジションを取り戻すことができず、ベンチスタートが続いた。

彼はそういう時の感情を、おくびにも出さない。だが時折、言葉の端々に出てくる「想い」がある。

たとえば、柏はこんな言葉を発したことがある。

「ふるい落とされた者」

認められない。頑張っても、走っても、戦っても、認めてくれない。

そう、自分はふるい落とされてしまったんだ。

そんな気持ちを反発心に変え、パワーに変え、モチベーションに変える。

簡単ではない。事実を認め、そこから這い上がる。簡単なはずがない。

青山敏弘もまた、プロ1年目で「ふるいに落とされた」かのような感覚を味わった。

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