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【2018年紫熊の勇士】青山敏弘/新しい6番の未来

 

昨年の苦しみは、青山敏弘にとっては未知の体験だった。

それまでの彼のサッカー人生は、ケガとの戦いであった。膝の前十字靱帯断裂はもちろん、半月板の二度にわたる手術や腰痛など、彼の肉体が悲鳴をあげるほどの負傷と何度も何度も、戦った。その戦いの中で彼は自分のプレーを磨き、3度の優勝とJリーグMVPという実績を手にした。ワールドカップ出場も、彼ほどの負傷の連鎖を味わった選手としては信じがたい栄光だといっていい。

ところが昨年はどうだったか。確かに途中、腰痛で離脱した時期もあり、肉体的なコンディションは決して良くはないが、サッカーができない状況ではなかったし、実際にピッチに立っていた。しかし、そのプレーぶりはかつての青山敏弘でなかったことを認めざるをえない。「昨年のプレーは、ほとんど覚えていない」と語るほど、彼は「落ちて」いた。メンタルである。

この課題について、簡単に語るべきではない。メンタリティの問題は微妙かつ繊細だし、誰もが陥る可能性を持っている。メンタルの強弱を図れる物差しなどない。たとえば千葉和彦も、昨年は明るさを見失い、悩み苦しむ状況に陥った。苦しさや辛さ、難しさは、突然襲ってくる。そしてそれが周囲にも影響することがわかっているからこそ、青山も千葉も、ずっと苦しんでいた。特に6番は「今、やるべきこと」を説く森崎和幸の言葉に対しても素直になず、「今の俺にはできない」と頭を振った。「あの頃は、壊れていた?」という問いかけに「そう思う。人としてただ、生きているだけ。サッカー選手ですらなかった。(なにもかもが)怖かった」と語ったのだ。

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