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【THIS IS FOOTBALL】天皇杯改革の必要性

名古屋が奈良クラブに、G大阪が関西学院大に敗れ、「ジャイアントキリング」などとメディアが騒ぐ。確かに大番狂わせではあるが、サッカーのように得点がなかなかとれないゲームでは往々にあること。1996年アトランタ五輪で日本がブラジルに勝ったのも、2010年ワールドカップで日本がカメルーンやデンマークに勝ったのも、世界的に見れば「ジャイアントキリング」だろう。それがサッカーだ。

ただ、ここで考えないといけないのは、天皇杯という大会そのものの存在意義である。「カップ戦を統合しろ」なんてことを言いたいではない。天皇杯という名誉あるカップを掲げている以上、昨日の広島対鳥取戦のように、雨の中の平日であったとしても観客が3000人を切るということでいいのか、ということだ。

実感としては、頑張ってよく集客したという印象は強い。だが、晴れていたとして、あるいは土日だったとして1万人のお客様が来場するかというと、そこは疑問だ。そもそも会場のある福山市民に大会の告知が行き通っていない。それだけでなく、サッカーファンにとっても「見に行きたい」という気持ちが盛り上がらないのが現状ではないだろうか。

天皇杯は1921年からスタートした歴史ある大会である。イングランドからFAカップを寄贈されたことをきっかけに創設され、1948年からは天皇杯も拝受した。歴史の重さという点ではJリーグもルヴァンカップも足下にすら及ばない。だが、その歴史にふさわしい注目度、関心を与えているだろうか。

そもそもの問題として、サッカーはまだまだ日本人にとって最大の関心事ではないという現実がある。ヨーロッパでは文句なしのナンバー1スポーツであり、国民の関心も高い。歴史もあるから、「水曜日はカップ戦、週末はリーグ戦」のリズムは染み込んでいる。しかし、そもそもJリーグに対する一般的な認知度をこれからさらに向上させないといけない現状がある以上、「水曜日はカップ戦、週末はリーグ戦」のリズムまで染み込ませようというのは、なんとも贅沢ではないか。

一方では、アマチュア選手たちの事情もある。天皇杯がオープン化されている以上、アマチュアのチームだって参加資格はある。ただ、アマチュアということは「仕事」や「学業」を他に抱えているわけで、本来であれば水曜日は本業にいそしむべき日程だ。そういう人々に対してもし「水曜日はカップ戦」のリズムを押し付けるのであれば、筋としては「休業保障」の対象にすらなりうる。もちろん週末開催であってもそこが仕事になる可能性もあるが、平日よりは可能性が低い。さらにいつも自分たちのホームでできる保証もなく、コストもかかる。

全ての人が満足できる開催形式などない。だが、現状のままでいいはずもない。2021年にJFAは100周年を迎えるわけだが、その記念すべき年をめざして、天皇杯を根本的に改革する必要があるのではないだろうか。このままでは美しい天皇賜杯やFA銀杯が泣く。

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