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【2018紫熊の戦士】丹羽大輝/誇りにかけて

紅潮した表情は暑さだけのせいではないだろう。城福浩監督の笑顔が、充実したトレーニングの日々を物語っていた。

リーグ再開まであと3週間弱となった28日、韓国ソウルからクルマで1時間の距離にあるパジュでキャンプを張っていたサンフレッチェ広島は午前中のトレーニングでキャンプを打ち上げ、プレシーズンマッチの会場となる韓国南部の都市・大邱へと移動した。タイトルに向けてまさに正念場。夏場、そして各チームの厳しいマーク。これまでの15試合とは全く様相の違う戦いに向かう選手たちは、充実したトレーニングを終えた充実感に満ちていた。

ここまでの15試合で37ポイント。素晴らしい成果を満天下に示した広島ではあるが、このまま独走が許されるほどJリーグは甘くない。守備における集結の厳しさ、攻撃の速さ。そこにプラスアルファの何かがなければ、チームは失速する。城福監督はその「何か」の一つに、ボール保持率の高まりを求めた。GKからのビルドアップ、五分五分のボールではなく足下で繋ぎながら相手を走らせる。本来目指すべきサッカーへのステップを踏もうと決断した。しかしそれは決して、今まで積み上げてきたサッカーからの大きな変更を示唆するものではなく、あくまでもオプション。継続して続けたスローインのトレーニングも、枝葉の部分にすぎない。

本当の意味で重要なのは、「フェアな競争」の再構築であった。シーズン当初はリーグ戦組とカップ戦組の熾烈な戦いがあり、そのせめぎ合いの中でチームは向上していった。だがいつしかカップ戦組は失速し、4月〜5月の連戦でもターンオーバーを活用せず、ほぼ固定メンバーでリーグを戦った。このことが第15節のC大阪戦における後半のトーンダウンにつながったと見ていい。

広島が今の位置を守りながら走るためには、もちろん選手が固定されてコンビネーションを高めていくことも必要。だが一方で、今までサブに甘んじていた選手たちが奮起し、主力を突き上げ、競争を激化させる方がより重要だと考える。競争意識の高まりは選手個々のモチベーションを向上させ、より高いものへの執着心を激化させる。

特に再開後は連戦が多い。いきなりG大阪・名古屋の水・土連戦。7月25日の対浦和戦から3連戦。8月11日、長崎とのピースマッチの後も天皇杯の結果次第では5連戦が待ち受ける可能性もある。酷暑の連戦は、とてもではないが11人だけでは乗り切れない。誰が出てもチームのレベルを落とさないように戦える戦力を持つチームが、この難関を乗り切ることができる。そういう意味でも、このキャンプでどれほどの人材が「俺を使え」と名乗りを上げてくるのか、それがタイトルへの王道だと考えた。

「かなりの選手がチームを突き上げてくれたし、意識も高くなっている」

城福監督は、そう評価している。

たとえば城南FC戦でハットリックを達成した川辺駿、得点をあげた森島司や松本泰志。広島期待の若者たちが、ゲームだけでなくトレーニングの現場でも躍動し続けてくれたことは重要だ。足下の技術に長けた彼らは、城福監督が取り入れようとしている「ボールを握るサッカー」においては重要な役割を持つテクノクラートだ。さらに得点やアシストという結果は出していないものの、フェリペ・シウバもようやく「特別な力」を発揮し始めた。城南FC戦で魅せた緩急を駆使した一気のドリブル突破は、やはり彼ならではの武器。「使ってみたい」という気持ちにさせるパフォーマンスだったことは言うまでもない。

突き上げてきているのは若者だけではない。

千葉和彦の復帰によって激化しているセンターバックの競争で中心的な存在になりそうなのが丹羽大輝だ。

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