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【2018紫熊の戦士】川井歩/プレースキッカー

駒野友一、森崎浩司、柏木陽介。

この3人の共通項は何か。

一つは広島ユースからトップチームに昇格したタレント。もう一つは?

答えは、どちらも優れたプレースキッカーであるということだ。そして実は、今年のルーキーである川井歩と川村拓夢もまた、駒野・浩司・柏木のグループに入る可能性がある。2人とも優れたキッカーであり、直接ゴールを狙える可能性を秘めた精度と強度を合わせ持つ能力を持っていることは疑いない。ただユースの頃の川村は自身が「キッカー」の才能を持っていることに気づかず、プロになってから自分の能力に気づいた。川井の方が自覚的であり、実際に「プレースキッカーに名乗りをあげたい」と手を挙げてもいる。

日本のサッカー史上、最高のプレースキッカーが中村俊輔と遠藤保仁であることは論を待たない。一方、無回転系のキックであれば、なんといっても本田圭佑だ。他にも中村憲剛や太田宏介、遠藤康や小笠原満男など、Jリーグには強烈なキッカーがいる。だが、かつては各チームに1人はいたプレースキッカーがここ最近は減少傾向にあることはまぎれもない事実だ。

ロシアワールドカップを見てもわかるように、モダンサッカーにおけるセットプレーの価値は、さらに重みを増している。ワールドカップ決勝においても、フランスの優勝を導いたといっていい前半の2得点は、いずれもグリーズマンのプレースキックから生まれた。また、クロアチアの1点目もモドリッチのプレースキックが起点。熱戦が続いたロシアでの戦いの決着をつけた、多くのシーンにプレースキックが絡んでいた。

たとえば、日本対ベルギー戦の戦評で、「痛かったのは最後の3点目ではなく、1点目と2点目だ。結局はCBの高さが足りないのだ」というものがあった。確かに、その指摘は正しい。だが、そこにもう一つ、ベルギーのキックの質が高いことを見失ってはならない。1点目、プレースキックの質が高かったから川島永嗣のクリアも難しくなった。2点目もアザールの素晴らしいクロスなくしてはありえない。たとえ中に190センチ台の選手がズラリと並んでいたところで、キックの精度が悪ければゴールにはならないのだ。かつてミハイロ・ペトロヴィッチは「いいキッカーがいいボールをいれてくれば、セットプレーの得点を防ぐことは難しい」と言ったことがある。もちろんペトロヴィッチらしい極論ではあるが、一方で真実をついている。

自由に使える時間と空間がなくなっている現代のサッカーにおいて、プレースキックはキッカーの側に余裕がもてる最大の好機である。だからこそ、ここで最高のコントロールと適したスピードをもった質の高いキックが繰り出させれば、得点率は自然とあがってくるのは必然だ。それは直接ゴールを狙うボールだけでなく、CKなど中で合わせる場合も同様である。

では、広島の現状はどうだろう。

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