都並敏史、11年ぶりの監督復帰。その先に見据えるJへの旅路(J論)

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広島でのプレー、そしてゴール

……ここまで5得点を記録していますが、ご自身のここまでの戦績としては、いかがですか。

ティーラシン●Jリーグでの1年目ということを考えてみると、20試合で5得点という記録については、満足はしていないけれど嬉しいですね。ただ、プレーの内容を見てみると、いいプレーもあるけれど悪かったプレーもまだまだある。満足していいところもありますが、まだできていないところもたくさんあると思っています。これからもっと、修正していきたいですね。

……どのゴールがお気に入りですか?

ティーラシン●アウェイの長崎戦で決めた得点は印象的ですね。

……その理由を聞かせてください。

ティーラシン●パスをチーム全員で繋いだ後の得点でしたから。自分がクロスに入っていってのシュートというだけでなく、チームが一体となって、みんなでゴールに繋げていったものだったので。

……あの試合はベンチからのスタートでした。

ティーラシン●そうです。チームは前半からたくさんチャンスを創っていたのですが、ゴールを決めきれなかった。なので自分が試合に入った時はチャンスを得点につなげるような意識を強く持って、試合に臨めましたね。それが良かったと思っています。

……その前のFC東京戦で先発を果たしたのにゴールできず、チームも初めて負けてしまった。その悔しさがありましたね。

ティーラシン●はい。FC東京戦に負けたことは本当に悔しかった。そしてその思いは自分だけでなく、チーム全員が持っていた。だからこそできるだけ早く、チームにいい流れをつくりたい。そんな気持ちを、みんなが持っていたんです。その想いを僕は、肌ですごく感じたし、心に伝わってきた。だからこそ、自分も何とかしなきゃという気持ちになったんです。長崎戦はいつもの倍以上というか、100%以上のパワーが出せたと思っています。

……確かにあのゴールは素晴らしかったし、質も高かった。ただ、シーズンの流れを考えてみれば、開幕の札幌戦でのJリーグ初ゴールが重い意味を持っていますよね。この時、チームはまだ走れる状態ではなく、後半は防戦一方でした。だからこそ、ムイのゴールで勝った価値は、とてつもなく重い。

ティーラシン●札幌戦でのゴールは、自分にとってもいいゴールだった。ゴールという出来事は自分にとってもいい瞬間だったと思います。でもプレーの内容としては、あまりよくなかった。自分の思い通りのプレーは、できなかったですね。

……それにしても、タイとは全く違う文化である日本でのプレーは決して簡単ではないと思います。特に前線からの守備などは、タイ代表でもムアントンでもそれほど経験してなかったのではないですか?

ティーラシン●広島では前線からプレスをかける守備をやっていますが、それはサッカーの基本ですよね。ただ、タイでプレーしていた時はワントップだったこともあり、ここまでの守備意識は求められていなかった。タイリーグではFWの守備意識は徹底されていなかった。日本のように8割とか100%のパワーでやる必要まではなかったんです。しかもワントップだったから、パスコースをきれば問題はなかった。100%の力で相手を追い掛けてプレスする必要まではなかったんです。でも広島でプレーする上では、2トップの守備の役割を監督が求めているし、前線からのプレスもなるべく100%に近い意識でやっています。

……それはできていると?

ティーラシン●うーん、できなかったことが多いですよね。でも100%でやれるよう、努力はしているんです。なので、少しずつは良くなってきたのかなと個人的には思っているんですよ。

……ただ、守備に力を使い過ぎると攻撃に力が残らない。そういう意見が過去では常識でした。

ティーラシン●そうですね。守備にあまりエネルギーを使い過ぎないで力を残して、それを攻撃で使うと効率よくできる。それは当然です。前線が下がり過ぎずに戻るエネルギーを前線で使う。そういう考え方もある。力が残って攻めれば、もっと効率よく力を使うことができるという考え方もある。  でも今は時代が違う。11人が全員で守備をして、11人全員で攻撃すればいい。そういうバランスをみんなでとろうとしている。だから自分にとっては問題ない。チームに溶け込もうという姿勢が大切なんです。

ヨーロッパで学んだ、 プロフェッショナル

……タイ時代のことを教えてください。生まれはバンコクですよね。

ティーラシン●そうです。今は主に国内線のターミナルになっているドンムアン空港の近く。街中ですよね(笑)

……サッカーはいつ頃、始めたのですか?

ティーラシン●子どもの時からサッカーは見ていたんです。でも最初は、そんなに好きではなかった。

……そうなんですか?

ティーラシン●はい。父親はサッカーが好きだったので、よくサッカー場にも連れて行ってもらっていました。父のサッカー好きは、子どもにも伝わっていましたね。プロの選手ではなかったのですが、とにかくサッカーが好きでした。

……なるほど。なのにどうして、好きじゃなかったんですか?

ティーラシン●当時のタイにとって、サッカーはプロのレベルではなかったんです。サッカーがプロレベルでないということは、正しいサッカーを教えてくれる人がいなかったということ。それに父親がサッカーをしている相手は大人です。自分と同世代は誰もいなかった。だから最初は好きになれなかった。

……サッカーをする友だちがいなかったんですね。

ティーラシン●そうなんです。ただ、父親に繰り返し、何回も連れられていくうちに同世代の友だちもできたんです。彼らとサッカーをやり始めると、すごく楽しくなった。時間を忘れるくらい好きになったんですよ。

……サッカーに夢中になった少年時代。勉強はどうでした?

ティーラシン●すごく好きなわけではなかった。好きな科目はありましたよ。好きでない科目は、サッカーの練習があって出席できず、ついていけなくなったんです。

……好きな科目は?

ティーラシン●社会科、特に歴史ですね。宿題が少ない科目です(笑)。授業はメモをとらなくてもよくて、ずっと歴史の話を聞くだけ。でも、本当に面白かった。

……サッカーをプロとして始めたのは?

ティーラシン●18歳の時ですね(ロイヤル・タイ・エアフォースFC)。ムアントンに入ったのは、19歳の時でした。

……ムアントンはずっと優勝してきたチームなのですか?

ティーラシン●うーん、というわけではなかったですね。僕が契約した時はまだ2部のチームで、そこで優勝してタイ・プレミアリーグに昇格したんです。そして昇格1年目で初優勝。代表選手を獲得するため、予算をたくさん使ったんです。

……ただ、ムアントンが常勝チームになる前、19歳の時にマンチェスター・シティに移籍しましたね。労働許可証の問題でプレミアリーグではプレーできませんでしたが、スイスのグラスホッパーに移籍し、試合にも出場しています。

ティーラシン●若い頃からヨーロッパに行けたことによって、いろんな勉強ができましたし、何よりもすごく楽しかった。当時、タイはプロリーグのない時期だったので、プロの世界がどういうものか知らなかった。「プロフェッショナル」とは何か、どういう存在なのか。それを現地で実感することができましたね。当時はヨーロッパでビザをとることも難しかった。そういう時期だったからこそ、若かった自分にとっては、プロの本質をヨーロッパで見るだけでも楽しかったんです。

……2008年に帰国し、2009年から復帰したムアントンではタイ・プレミアリーグ連覇に貢献。2012年には3度目の優勝を果たしてご自身も得点王に輝きましたね。そして2014年、スペインリーグのアルメリアに期限付き移籍を果たします。2度目のヨーロッパはスペインでした。

ティーラシン●ムアントンに戻った時、自分の生き方や心の持ち方について、いろいろと考えました。正直、ヨーロッパのレベルと自分のレベルには、まだまだ差があったと感じていましたからね。当時はタイのサッカーを意識するというよりもヨーロッパとの差をどうやって埋めようかと、そればかりを意識していました。そして5年のタイでのプレーで、自分が頑張ってレベルアップしたと感じたし、若い頃に感じたギャップはどれくらい埋められたか。そういうチャレンジャーとしての気持ちで、スペインに挑んだんです。ただ、アルメリアでのプレーは成功とは言えない。試合出場も少なかったからね(リーグ戦6試合出場0得点)。でもまあ、ポジティブに考えるとヨーロッパのチームに入ってみんなと練習できて、いろんなスタジアムに行けたこと。いい経験にはなりました。決して成功とは言えないけれど、スペインに行けて良かったと思っています。

……ただ、ヨーロッパのサッカー界ではまだまだ、アジア人は不当な評価を受けていると言われています。日本人も多くの選手がヨーロッパに渡っていますが、一部では日本人であるというだけで露骨な評価を受けた選手がいたとも聞きました。タイ人であるということが不利に働いてしまったと感じたことは?。

ティーラシン●はっきりとではないですが、少しはあったなと感じています。ただ、タイのサッカーは世界レベルでいい成果を残しているわけではない。低く評価されても仕方ないと受け止めて、みんなと接していました。

 

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この度は発売日が遅れてしまい、本当に申し訳ありません。

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