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【SIGMACLUB10月号※発売中】水本裕貴/哲学

勝点1の重みを受けて考えること

 

「今日のテーマは何ですか?」

水本裕貴がインタビュールームに現れた時、少し戸惑った。そしてジョークのつもりで「安室奈美恵さんかな?」とつぶやいた。

今年9月16日で芸能活動から引退する大歌手の熱烈な大ファンである水本のことを考えての言葉だったのだが、その瞬間に水本の表情が輝いた。

「じゃ、それでいきますか」

「いやいや、待って。さすがに今日はサッカーの話で」

「えーっ」

「来月号ではどう?」

「それでは引退の日に間にあわない」

いろいろとやりとりがあった中で、別の機会を設けることで納得してもらった。

焦った。

とんでもなく熱狂的な「安室奈美恵フリーク」の水本の想いを引き出すには、それなりの準備が必要となる。インタビューの当日は、そこの準備ができていないと説明し、日を改めてもらうことにした。

昨年の今頃は、こういう軽口もきけないような雰囲気が、広島にはあった。笑顔の写真すら、使うのも憚られるような空気感も存在した。

結果がいかに大切か。それはスポーツだけではない。会社でも業績がいい年と悪い年とでは、社員の笑顔が違う。輝きが違う。ましてプロスポーツにおいては、それが単純にクラブの周辺だけでなく、サポーターも含めた社会現象になっていく。プロスポーツクラブの営業収益は最大の浦和ですら79億円。例えばユニクロを展開するファーストリテイリングの売上は1兆1867億円(2018年2月期)。だが、その収益規模以上の社会的な影響力を持つのが、プロスポーツの特性である。

その広島に笑顔をもたらした原動力の1人が水本裕貴であることは論を待たない。かつては典型的なストッパーのタイプとして高さやスピードが目立っていた水本ではあるが、今は実にクレバーな守備が目立つ。まわりに声をかけ、ポジションを修正し、集結と散開を見事にコントロールしている。そのあたりはさすがの経験ではあるが、何よりも今季の水本が素晴らしいのはアスリートとしての能力が32歳にして向上していることだ。

「サッカーは経験を重ねれば重ねるほど上手くなる。ただ、走れなくなるからディエゴ・マラドーナも引退せざるをえなかった」

ミハイロ・ペトロヴィッチの名言である。

「2016年以降の自分のプレーは、確かに、あんまりよくはないかなと思います」

水本はサラリと振り返る。2015年11月対G大阪戦での眼窩底骨折以来、彼のパフォーマンスは以前のトップフォームにはなかなか戻らなかった。2016年シーズンは当初、ポジションを佐々木翔に奪われた。6月には第三中足骨を骨折し、全治2カ月の診断を受けた。なんとか復帰したものの、その秋から始まるチームの低迷を下支えすることができなかった。そして昨年の大苦戦。何とか1ポイント差でJ1残留を決めたものの、勝点33は今年のレベルであれば降格の可能性が高かった。チームの立て直しに水本も躍起となっていたが、なかなか難しかったというのが実感だろう。

「去年の勝点1の重みを今シーズンは生かさなきゃいけない。そこは、考えましたね。J1という舞台でチームがプレーできるチャンスを勝点1の差でつかみ取れた。だからこそ、今シーズンは昨シーズンの二の舞にしたくなかった。

昨年の苦戦の理由に対して、明確な何かがあるのであれば対処の仕方もあった。ただ一気に崩れたわけではなく、少しずつその予兆はありました。2016年から、間違いなく。対策を講じられることも多くなったし、あの年はACLもあったから、チームとしてメンバーが入れ替わった中で積み重ねることは難しかったのが正直なところです」

去年の苦戦は去年なりに理由がある。だが、そういう分析とはあくまで結果ありきであり、その分析が正しいと仮定して対策を講じてもうまくいかない場合が多い。分析とは後付けであり、本質的なものは結果として表に出てこない可能性が高い。だからなのか、水本は去年のことに対しては言葉が重くなった。

ただ、彼自身が2016年の後半から始まった低迷を「致し方ない」としているわけではなかった。

※続きはぜひ、発売中のSIGMACLUB10月号本誌で、ご覧下さい。

 

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