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【2019紫熊の戦士】和田拓也/今はまだワダタクを語らず。

プロサッカー界とプロ野球界の大きな差異は、選手の移籍である。

プロ野球には基本的に「自由な移籍」という概念が存在しない。あるのはトレードであり、フリーエイジェントだ。前者は球団都合であり、後者は選手が8シーズン(国内FA)の出場選手登録を続けた場合に勝ち取る権利である。以前はあまりに球団側の拘束が強く、選手の移籍の自由などは認められなかったが、1975年のMLBでデーブ・マクナリーとアンディ・メッサースミスが球団側の条件提示に不満を持ち、契約を更新しないままで1年間プレーを続けた後「俺たちは自由契約だ。他の球団と契約できる」と主張したことから、フリーエイジェント制が生まれた。ただ、今も日本プロ野球界にはFA(フリーエイジェント)に対するアレルギーは強いことも否めない。

一方、プロサッカー界は単純に契約書の問題だ。複数年か単年かによって、移籍のための違約金も異なる。以前はプロ野球同様に「移籍の自由」は厳しく制限されていたが、1995年に下されたボスマン判決(クラブとの契約が終了した選手の保有権をクラブが保持できない)によって、契約書に書かれてあること以外の「保有権」を主張することをクラブができなくなり、選手の移籍が一気に活性化した。世界的なスポーツであるサッカーの流れに日本が巻き込まれることは必然で、特に21世紀に入ってからのJリーグは常に選手の移籍が行われる(正確に言えば年2回の登録期間においてのみ、移籍は認められる。今年は1月4日〜3月29日までと7月19日〜8月16日まで。この登録期間のことを“ウインドー”と呼ぶ。ただし、18〜23歳の選手が下位カテゴリーのクラブに期限付き移籍する「育成型期限付き移籍」の場合は、この限りではない)。今回の和田拓也の場合も、ウインドーの期限が迫った中での期限付き移籍で、広島に限らずどこのクラブでも、ここから3月29日までは選手の流動が行われることになるだろう。

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