SIGMACLUBweb

【THIS IS FOOTBALL】挑戦こそ、楽しい。続けることは、難しいけれど。

この時期の首位など何も意味を為さないことは、サポーターならよくわかっている。

「史上もっとも祝福されない2位」(城福浩監督)に終わった屈辱は、何ものにも代えがたい。無人の野を行く独走から一気に転落してしまった。その悔しさを広島は共有している。一方で、現実も見ないといけない。予算はJ1の平均以下。最大の補強がレンタルバックの野津田岳人とJ2経験しかないドウグラス・ヴィエイラ。ルーキー3人を公式戦に起用せざるを得ない状況。その中でACLを戦わねばならない。城福監督はシーズン前、関東のサッカー関係者から「広島は本気でACLを戦うつもりなのか」と言われたという。しかし、ない袖は振れない。

G大阪戦の集客は1万3331人。快晴の土曜日、確かに肌寒くはあったが、1万5000人には届かなかった。「スタジアムの立地等は言い訳にしてはならない」とよく言われる。確かにクラブ関係者がそれを言ってしまっては、次のステップは踏めない。しかし、難しいのは難しい。今季は値上げという苦渋の決断を行った。パックスタンド指定席化はかつても経験があるが、そこはどうしても観客が埋まりづらくなる。価格の高さは、立ち上げの時は特に「量」に響いてしまう。スポーツ興行においての適正価格は、果たしてどういうレベルで決めないといけないのか。悩ましいところだ。ただ、続けないと、成果は絶対にあがらない。

昨日の試合では、イベントも相当に頑張っていた。スタジアムグルメでは全ての店舗で「ふわふわ」をテーマにしたオリジナルメニューをつくり、気球を飛ばし(風の関係で途中で中止になってしまったが)、試合では紫のジェット風船。「野球の真似じゃないか」という人もいるが、子どもたちはとても喜んでくれたし、楽しいことはどんどんやっていい。

こういうスタジアムでのイベントに即効性はない。今回やって、観客動員があがらないから、次はない。そういう短絡的なことでは、何も生み出さない。継続することで意味が出てくる。かつて1万人の観客動員が「夢」のようだった1990年代後半から、サンフレッチェ広島はスタジアムをテーマバーク化しようと試み、様々なイベントを打ち始めた。スタジアムグルメも充実させ、子どもたちに喜んでもらえるような施策にもトライした。すぐには成果が出ない。しかし、一生懸命に取り組んだことが、「1万人は当然」という状況を生み出し、日本でもっともユニフォーム着用率が低いと揶揄されていた時代を抜け出し、スタジアムに紫が溢れるようになった。そこまで10年の年月はかかっている。やり続けることで、成果はジワリと浸透していく。もっともいけないのは、やらないことだ。動かないことだ。

チームも同じである。城福浩監督が今季、トライしていることは、決して簡単ではない。「トレーニングでの状況をフェアに見てメンバーをセレクトする」ことは、言うのは簡単だ。しかし、実際は過去の実績、名前、身体能力などが頭の中にインプットされ、ピッチでのプレーだけを見て判断することは難しい。大迫敬介や松本泰志の抜擢は、決して簡単ではないのだ。水本裕貴をメンバーから外し井林章をベンチに入れることも、中林洋次ではなく廣永遼太郎をセカンドGKとして選択することも、2列目もできるドウグラス・ヴィエイラをトップに起用してパトリックをベンチスタートさせることも、簡単ではない。結果が出なかったら、すぐに批判の対象になる。

実際、開幕戦での1-1という結果を受け、サポーターからは批判の声もあがった。ハイボールに対して不安を残した大迫、競り合いに不安定な部分を見せてしまった吉野恭平、ボールを持つことだけに執着してしまったダブルボランチや1トップ2シャドー。パトリックを投入することで雰囲気が一変し、同点になったことでなおさら、指揮官の選択に対する不安や不満の声は聞こえてきた。

しかし、彼は「継続」を選んだ。

(残り 2250文字/全文: 3855文字)

ユーザー登録と購読手続が完了するとお読みいただけます。

ウェブマガジンのご案内

日本サッカーの全てがここに。【新登場】タグマ!サッカーパック

会員の方は、ログインしてください。

« 次の記事
前の記事 »

ページ先頭へ