SIGMACLUBweb

【立て直しへ】城福浩監督、攻撃へのテコ入れを明言

そもそも、攻撃はずっと課題だった。しかし昨年はパトリックによって覆い隠されていたし、今年は堅牢な守備による5連勝とG大阪・神戸の守備の緩みによって生じた2試合7得点によって、オブラートに包まれていた感はあるが、攻撃には問題を抱えていた。

城福浩監督はそこに気づいていないわけではない。もちろん、しっかりと認識していた。それはクラブも同様で、だからこそ開幕直前にハイネルを補強した。広島に足りない「個の突破」「アタッカーのスビード」をプラスするために。

広島はチームとしての能力が低いわけではない。プレッシャーが少しでも緩めば、ボールも繋げる。もちろん、本来であれば相手がプレスをかけてくることが「美味しい」という発想にまで持ってくるべきだが、今のチームにそこまでの、2008年〜2010年あたりのレベルを求めるのは酷だろう。能力が低いということではなく、習熟度の違いである。

しかし、コンビネーションだけで得点をとるのは無理がある。川崎Fにしても名古屋にしても、そして現在リーグナンバーワンのカウンターを誇るFC東京にしても、強烈なストライカーがいる。それだけでなく、そのストライカーの能力を引き出すサポートアタッカーがいる。パスを出す能力を持つパッサーに注目がいきがちだが、重要なのは彼らが精度を発揮しやすい環境をチームとして確保していることだ。それがドリブルという個人能力の発揮による「剥がし」だろうし、パス&ゴーの徹底によるスペースメイクだろう。強烈なミドルシュートやセットプレーの脅威も相手のプレッシャーを緩ませる要因でもある。

広島の問題は、常に相手のマークがいるところで最後のシューターがシュートを打っていることだ。完璧に崩したという印象があるのは、G大阪戦での柏好文のゴールと名古屋戦くらい(そしてこちらはゴールできていない)で、神戸戦の4得点も「こじあけた」というイメージだ。もちろん、サッカーのゴールでそうそう「崩しきる」というシーンは多くない。神戸戦やメルボルン・ビクトリー戦での渡大生のゴールのように、ほんの少しだけタイミングをずらしてスペースをつくってゴールに繋げるようなプレーが必要だ。しかし、崩しきるためにどうすればいいのかという共通認識と成功体験を持っていないと、攻撃の基軸ができない。

広島が「崩したな」というシーンを振り返るとG大阪戦や名古屋戦の柏、そして仙台戦でのエミル→ドウグラス・ヴィエイラ→柴崎→エミルという形で、最後はハンドかどうか微妙な雰囲気が残るエミルのシュートにつなげたシーンも「崩し」に近い。いずれもワイドプレーヤーが中に入った(いわゆるハーフスペース)ところでフリーになっている。その動きが相手にとって「意外」であったからこそカバーが遅れるわけで、ここは一つの方程式だろう。残念なことに鳥栖戦では、そういうシーンがほとんどなかった。

ただ、方程式はフォーマットになりやすい。それを積み重ねることで選択肢を増やし、相手に考えさせることで集中を鈍化させることは必要ではあるが、現状ではまだその積み上げはない。また、そういう方程式を積み上げたはずのペトロヴィッチ監督時代も、最後(2011年)は相手に研究されつくしてしまい、攻撃に閉塞感が漂ってしまって個人頼みになってしまった感が強い。どうしても、そうなってしまうのだ。

城福監督が「コンビネーションだけでは」と語ったとおり、どこかで個人に頼ることも必要になる。森保一監督時代、詰まるとミキッチにボールを預け、彼の突破でスペースを打開した。2015年には柏好文が台頭し、さらにドウグラスの突破もあった。そこに青山敏弘や高萩洋次郎といった特異なパッサーが絡み、浅野拓磨のようなスビードスターが相手を脅かすことで得点を量産していった。では、今の広島にそういう「個」は存在するのだろうか。

いる。

(残り 2093文字/全文: 3679文字)

ユーザー登録と購読手続が完了するとお読みいただけます。

ウェブマガジンのご案内

日本サッカーの全てがここに。【新登場】タグマ!サッカーパック

会員の方は、ログインしてください。

« 次の記事
前の記事 »

ページ先頭へ