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【THIS IS FOOTBALL】躍動感を生み出せ

■ハイライトでもわかる攻撃の停滞

4得点の歓喜から一挙に転落した気分である。0-1という敗戦。具体的なチャンスは前半の清水航平、後半のパトリック、二つのシュート以外にはない。期待を集めていた森島司も、この日は不発。清水航平のビッグチャンスにダイレクトパスを供給して絡んだシーン以外は、特別なインパクトを残すことはできなかった。

この日は相手の札幌も無理をしてこなかった。もちろん、チャナティップやアンデルソン・ロペスがいないということもあるのだろうが、ミハイロ・ペトロヴィッチは冷静な判断を下し、ボールを持って時間を進めるためのポゼッションを選択している。具体的な崩しのシーンはゼロ。我慢してボールを動かしていることで広島の守備が集中を失ったところを早坂良太が抜け目なくついた。それによるホームチームの勝利で札幌ドームは歓喜したが、試合の内容そのものは躍動感もなく、DAZNのハイライトを見ても「おおっ」としいうシーンが両チームともほぼない。

札幌の場合は今後に向けて上積みの要素はある。鈴木武蔵も負傷して日本代表を辞退したが、ジェイが戻ってきたし、試合後にアンデルソン・ロペスと会って聞いたところ、次の試合からはプレーできると語っていた。チャナティップの負傷程度がわからないが、いずれにしてもケガ人は少しずつ戻ってくる。一方、広島はどうか。青山敏弘が戻ってくれば、という希望もあるが、彼に90分フル稼働を頼むには、もう少し時間がかかる。森島の台頭は力強いが、まだまだ安定というわけにはいかない。ハイネルも可能性を見せてくれてはいたが、絶対的なものでもない。パトリックが復活傾向にあるのは疑いないが、彼に全てを委ねると去年後半の二の舞になる。

いずれにしても広島は、チームとして修正しないといけない。いや、修正という言葉は違う。成長である。

■距離感が躍動感につながる

 

試合後、柴崎晃誠がこんな言葉を語ってくれた。

「パス回しもリズムが同じで変化をつけることができなかった。相手がプレスにきた時もどうやっていなすのか、そこもできていなかった」

表現は違うが、城福監督も近いことを言っている。

「いつ、無理をするのか。いつ、やり直すのか。そこのバランスですよね」

たとえば相手がプレスを仕掛けてきた時、そこを利用して剥がすことも、また安全策を選んでやり直すことも、どちらも考えられる。ただ、いつも同じ選択では、リズムは変わらない。柴崎は「たとえばダイレクトとか、変化をつけていかないと」とも語ったが、そこを選択するためにあえてゆっくりのリズムにすることも大切になる。だが、「ゆっくり」とか「安全」とか、そういう選択ばかりをやっていてもつまらないし、攻撃に変化もない。

「縦にチャレンジしても、そこからどう絡んでいくのか」(柴崎)

結局は、縦にクサビを入れた時がポイントだ。後ろでボールを回していても縦に入れることができずにサイドに振ってばかりでは、それこそ攻撃に変化は生まれない。柏好文にボールが入ればある程度は運んでくれるだろうが、そればかりではさすがの柏もチャンスメイクできない。まずは中央。選択肢はそうでなくては面白い攻撃はできない。

そこで重要なのは、縦に入れた時の距離感だ。

札幌戦では明らかに、ドウグラス・ヴィエイラと中盤の距離が広過ぎる。特に守備の時が問題だ。5-4-1のブロックをつくるのはいいのだが、その4の位置がドウグラス・ヴィエイラと離れすぎて、攻撃に切り替わった時にFWが孤立してしまっている。もちろん「1対1なら数秒、前線の選手が持ちこたえてキープしてほしい」(城福監督)というのも当然。ただ、2列目がもっといい距離で前線をサポートできていれば、もっといい攻撃ができる。フリックなどの1タッチコンビネーションも、距離感が適切でなければうまくはまらない。清水航平の決定機は川辺・森島・ドグの3人がいい距離感でプレーしていたからこそ、ダイレクトパスの連続が生まれ、清水もスペースに飛び出せた。

この問題を解決するには、最終ラインを押し上げてコンパクトな状況をつくりあげるしかない。となると、もっと前からの守備を強化し、限定していく必要がある。その役割を誰が担うのか。

 

■野津田システムの可能性

ここで野津田岳人という選択肢が出てくる。

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