都並敏史、11年ぶりの監督復帰。その先に見据えるJへの旅路(J論)

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サンフレッチェ広島スタジアム総合戦略推進室長 信江雅美氏インタビュー

アメリカスタジアム視察で感じたこと(前編)

 

 

新スタジアム建設に向け、

アメリカの事情を学びたい

 

……アメリカのスポーツとスタジアムを視察してみようとお考えになったきっかけは、なんでしょうか。

信江●新スタジアム建設の推進体制が決まり、広島県知事・広島市長・広島商工会議所会頭で構成員とし、久保会長がオブザーバーとなるサッカースタジアム建設推進会議が立ち上げられました。そして、その配下に、各組織の事務方職員を構成員とし、広島県サッカー協会職員にオブザーバーとする作業部会が設置されることになりました。また、先般、広島市が新スタジアムの基本計画策定支援業務の公募型プロポーザルを公告し、基本計画の受託業者がPwCアドバイザリー・昭和設計・福山コンサルタントJVに決まりました。作業部会と受託業者がやりとりをしながら基本計画を作成し、推進会議で決定していく流れです。当然のことながら、密度の高い議論の中で、優れた基本計画を策定しなければなりませんが、そのためには、日本初の「まちなかスタジアム」を作り上げるうえで、海外の先進事例を集め、知見を習得することは大変重要なことです。

今回は米国に視察に行ったわけですが、当然のことながら、サッカーの本場は欧州です。とはいえ、1996年に開幕した米国のMLS(メジャーリーグサッカー)は着実に観客動員数を伸ばし、既にJ1の平均入場者数を抜いています。米国の4大スポーツ(アメリカンフットボール、アイスホッケー、メジャーリーグ、バスケットボール)、そこにMLSが食い込んで5大スポーツになろうとしている。4大スポーツという圧倒的に強大なコンペティターがありながら、どうやって観客動員数を伸ばしたのか、そこが知りたかった。アメリカはプロスポーツの本場であり、スポーツを通じたエンターテイメントやホスピタリティの提供の面でも関心がありました。

もう一つは事業としてのプロスポーツを成立させているという事実。そこで何か、参考にできるものはないか。

欧州のサッカーの基本はUEFA(欧州サッカー連盟)であり、最終的には国同士の戦いです。もちろん欧州でもサッカー以外のプロスポーツはあるが、サッカーのプライオリティが非常に大きい。なので、サッカーの試合を観に来る人だけでスタジアムがいっぱいになる。すべてがそうではないけれど、そういう傾向が強い。ただ日本では、そうとは限らない。サッカーだけで満員になれば幸せなことだけど、現実はエンターテイメント性のあるサービスやホスピタリティを含めた楽しさを提供しないといけないと考えています。そこがお客さんの裾野を広げて、更なるファン・サポーターを増やしていくという良い循環になっていく。

アメリカには4大スポーツが先行してありながら、MLSがその中で観客動員数を伸ばしている。だからこそ、日本のサッカースタジアムを考える上でMLSは大事だし、見ておかなければいけないと個人的に思った。そう考えると、いてもたってもいられなくなったというのが本音です。

ただ、せっかくアメリカにまで行くのだから、MLSのサッカースタジアムだけでなく、他の4大スポーツの施設と比較しながら見ることも大事だなって思ったんですよね。また、単にスタジアムでの試合を見るだけでなく、施設自体の表から裏まで視察し、また、観客動線や関係者動線を確認したうえで、施設を運営されている方、クラブを運営されている方、そんな人たちと密度の高いビジネスミーティングをおこなうことが不可欠でした。

……MLSでは人工芝のスタジアムを使ってプレーしているチームもあるようですが。

信江●NFLの人工芝スタジアムを兼用で利用するチームもありますが、今はどんどん、新しい天然芝の専用スタジアムが増えています。規模としては2万〜3万くらいで、わりとコンパクト。これもまた、事業性を重視した結果だと思います。今回はアメリカン・フットボールのスタジアムも見ましたが、それはもう、桁が違いますね。大きさも設備も、お客さんへのホスピタリティの内容も違う。そして、みんながそこを目指しているわけです。まずは身の丈にあったスタジアムをつくって、収益がよくなれば増設していく考え方なんですね。

……日本では、スタジアムを自前で持つクラブは限られていますからね。浦和も横浜FMもFC東京も違う。

信江●アメリカでも、公共の自治体が所有しているスタジアムは多いですよ。公共が建設主体になっているスタジアムも多い。ただ、クラブが所有しているスタジアムもある。最近多いのが、施設管理を生業とした会社が所有しているスタジアム。不動産開発からいろんなリゾート施設、ホテル、コンサート会場、スタジアム、アリーナ、様々な施設を所有して、運営管理業務を事業化させた業態が発展して、施設も所有している。

例えばロサンゼルス・レイカーズはAEG(アンシュッツ・エンターテイメント・グループ)という会社が所有していますが、そこはホームアリーナのステイプルズ・センターも所有しています。この会社は面白くて、ローリング・ストーンズとかジャスティン・ビーバー、セリーヌ・ディオンとか、著名なアーティストの長期興行権も持っている。自分たちが所有しているスタジアムやアリーナで、ビッグアーティストのコンサートを打つことによって、施設の稼働率を上げる。ああいった企業は日本には今はまだありません。

日本の場合、これまでは、公共施設がつくって、公共が運営管理しているケースが多かった。ただ、事業性の追求はもっと増幅させないといけない。安全な運営管理はもちろんだけど、その上でしっかり利益を出す。そういう時代なのかもしれません。

(続きはSIGMACLUB9月号で)

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