都並敏史、11年ぶりの監督復帰。その先に見据えるJへの旅路(J論)

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チームを勝たせるために、働く男

 

ボランチとは何かを考える時、そのポジションに相当、こだわっている選手に話を聞くのが一番だと考えた。広島でいえば、誰だろう。

真っ先に思い浮かんだのが、川辺駿である。サイドハーフでプレーした昨年、大好きなサッカーをやることが苦痛になるほど悩みに悩んだ。今季もシャドーで起用されると「なかなか難しい」とコメントしている。そしてボランチの位置では、嬉々として、伸び伸びとボールに触っている姿。

よほど、このポジションが好きなんだな。

そう感じたから、今回の特集ではまず、川辺駿に話を聞こうと思った。ところが、彼の答えは……。

「うーん、なんですかね…ボランチ…そんな深く考えたことないです(笑)」

思わず、転けそうになったが、そこはまず続けないといけない。

「どうして、ボランチをやりたいと主張しているの?」

「ゲームに関わっている回数が圧倒的に多いじゃないですか、ボランチって。ディフェンスだったら攻撃の時はリスク管理もしないといけないし、ステイしてゲームを見ていないといけない。FWの選手だったら、後ろがブロック引いて守っている時って、そんなに多くはボールに触れない。FW一人でボールを取りに行けるほど簡単じゃない。でもボランチは攻守両面で常に試合に関わっている。そういうところが楽しいですね」

まさに、サッカー少年。ボールに関わりたい、ゲームに関わりたい。孤立するのは嫌だ。だからボランチがいい。なんと、わかりやすい。

ただ、川辺は決して「王様」タイプではない。広島ユースの時も、「俺にボールを回せ、だったら何とかしてやる」って感じでもなかった。考えてみれば、広島ユースは「王様」を育てない。前田俊介も髙萩洋次郎も、森﨑浩司や森﨑和幸も、王様ではない。中村俊輔や中田英寿、小野伸二のような、どこに立っていても自分のプレーを見せて、足下にボールを要求するタイプではない。もっともそういうタイプは、今のサッカーシーンにはほとんどいないことも事実だ。献身性と創造性をあわせもったモドリッチ(レアル・マドリード)が最高峰と評価される時代である。いい・悪いではなく、それが時代なのだ。

川辺は自在にポジションを移す。それは常に、周りのサポートを考えているからであり、「まわりの選手たちにとって、いい判断の材料となれば」と自覚している。だからこそ、彼は360度のプレービジョンを描きたい。サイドに出ると180度。そのビジョンの違いは確かに大きい。

ただ、彼がボランチにこだわるのは、そういう明快な理由ではない。別にパッサーとしてゲームをつくりたいというわけではない。というよりも彼にはゲームメイカーとしての自覚もない。パスが得意だという思いはあるはずだが、それだけの選手ではない、というかなりたくないのである。

「司令塔とか……、そういうのってあんまり好きじゃないんです。言葉の使い方が難しいんですが、ただ何でもできるようになりたいんですよ。自分でいうのもなんですが、スピードもないわけではないし、身体の強さも重要だと思う。上手さも、守備も、できるようになりたい、アシストとか得点とかも重要だし。

でも、正直にいえば、王様とかにはなりたくない。働く男がいいんです。カンテ(チェルシー・フランス代表)も好きな選手なんですが、彼にしても王様感はないじゃないですか。常に働いている側、というか」

王様とか働く側というか、まるで革命の階級闘争のような話だが、川辺の言いたいことは、そんな大仰なことではない。いつもサッカーに関わっていたいということだ。マンガの「ジャイアントキリング」でいえば、王子(ジーノ)よりも椿大介というところか。そういえば椿も川辺もスピードがある。

「まあ、派手なプレーも好きなんですけどね。働き者として、決定的な仕事ができれば。僕は、働きたいんです。アヤックスからバルセロナに行ったフランキー・デ・ヨングが自分の理想ですね。上手いし、いつも前に出ているし、(攻撃の)意識も高い。守備でもサッとボールをとっていく。そんな感覚が魅力です」

何でもやりたい。サッカーで必要なことは何でも。だからこそ、自分は中央でやりたい。中央の選手だという自覚は強烈だ。

「サイドでプレーしていても、どうしても中を意識する。真ん中にいる選手を見て、自分ならこうするのにとか、そういうことを考えてしまう。僕はやっぱり中央の選手だし、そこでできる自信はあったんだと思います。だから、ボランチでやりたいってずっと、思っていたんですよね」

それは決して、エゴではない。何度もいうように、彼は純粋なサッカー少年である。自分が得点を決めればいい、チームが勝とうが負けようが、そんなに重要ではないというメンタルではないのだ。

チームを勝たせたい。

今年、川辺が何度も言う言葉である。

もちろん、彼には海外に行きたいという欲望はある。そのために活躍したいという気持ちもある。しかし、だからといって、自分だけがよくなればいいという気持ちはない。チームの勝利に貢献してこその自分の飛躍である。だからこそ、彼は言う。「チームを勝たせたい」と。勝利のために自分がもっとも貢献できるのが、ボランチである、と。

「今年はボランチでやらせてもらっていて、自分のプレーが出しやすい。もちろん、ここまではしっかりと(自身の良さが)出ていると思います。課題ももちろん出ていますが、より前向きに失敗も成功も捉えられていると思います。ただ、もっと結果を出さないといけない。自分がチームを勝たせるプレーができていれば、もっと上の順位で戦えている。前半戦、そこは物足りなさを感じています。パスを散らすだけでなく、本当に決定的なシーンをもっと何回もつくらないといけない。一発のスルーパスも狙っていますが、もっと自分がいいボールを出せていれば、得点になっていたシーンもあるので」

 

(続きはSIGMACLUB9月号で)

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