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【紫熊の戦士】吉野恭平/期待を裏切りたくない

ファンサービスも特に熱心なタイプではない。サインをしていても、特に愛想をふるまう感じでもない。

そんな吉野恭平が、全く違う姿を見せたのが、ファン感謝デーの時だった。カクテルやソフトドリンクをふるまうコーナーにいた彼は、大きな声でサポーターを呼び込んできた。松本大弥を呼び「カクテルをつくりなさい」。大弥がシェイクする時にも大きな声で音頭をとり、周りを楽しませていた。それだけではない。女性が「カクテルをください」と言うと「年齢確認できるものはありますか?お若いので確認を」。ジョークではあるのだが、女性がパッと笑顔になった。

こういうサービス精神があるのなら、普段からやればいいのにとは思う。でも、それができないのが、吉野恭平という男の性なのだろう。照れ屋で、熱血なのにそれを表現することができない。感謝の気持ちはいつも持っているが、それを言葉にすることもできない。不器用なのである。

昨年も今年も、吉野は竜頭蛇尾のシーズンに終わった。シーズン当初は試合にも出場。特に今年はリベロのポジションを確保し、開幕以来7試合負けなし、5連勝という結果も手にした。しかし、そこから悪夢と言っていい5連敗。失点も重なり、仙台戦では大きなミスも犯してしまった。それでもスタメンから外れることはなかったが、つづく鳥栖戦で0-1の敗戦。それでも「革命」が起きた湘南戦ではポジションを取り戻したが、C大阪戦でボランチとして起用され45分で交代。そこからの夏場、メンバーにも入れなかった。一度、確保したスタメンの座を彼は失い、皮肉にもチームは上昇気流に乗った。

「正直、相当に(メンタルが)しんどかった」

当然といえば当然。試合に出て、外されて、「くそ、それでも頑張ろう」なんてすぐに思えるのは、アニメの世界だけだ。誰もが大空翼でも、孫悟空でもない。

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