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【SIGMACLUBNEWS】指宿キャンプ総括/攻守に成果あり。しかしまだ始まったばかり。

キャンプの成果をどう捉えるか。

それは、究極的にはシーズンを見ないとわからない。補強の成否にしても、たとえば2017年のプレシーズンで共に活躍したフェリペ・シウバと工藤壮人が共に開幕から不振に陥り、チームにフィットしなかった。工藤やシウバらの個人的な能力のせいというよりもチーム全体として攻守に機能できなかったことが苦戦の大きな要因。一方で、2015年のドウグラスにしてもプレシーズンで「20点はとれる」と予測できた人は皆無で、実際に彼は開幕スタメンを勝ち取ることはできなかった。もちろん、負けるよりも勝った方がいいし、得点をとる方がとらないよりもいい。しかし、そこにことさら、こだわる必要もない。大切なのは、チームがどういう方向に歩こうとしているか、だ。

先日のトレーニングマッチで重要なのは、8点をとったことではなく、相手をシュートゼロに抑えきったことだ。

たとえば2017年最初のトレーニングマッチであった鹿屋体育大との試合もまた、8-0での勝利。しかし、内容は全く違う。立ち上がりからカウンターを何度もくらい、決定的なシュートも打たれている。特に4-0になった後は2度、廣永遼太郎のビッグセーブを必要とした。後半にも1点モノのシーンが2度もあったが、大迫敬介が何とか防ぎきっている。確かに得点シーンはきれいだったが、大ピンチが何度もあった。それでも失点していないという事実はあるが、このシーズンで広島が目指していた守備(リトリートではなくアグレッシブにボールを奪われた瞬間に奪い返す)が機能していなかった証拠である。

シーズン最初の試合であり、機能しなくても致し方ない。そういう考えもある。だが一方で、この「奪われたら奪い返す」という激しさを、試合を通して持続させることができなかったのは痛い。前線の選手たちの特性もあったが、この最初の試合における内容が、選手たちに新戦術に対する不安をもたらしたとも言える。もちろん、そういう言葉は当時、選手からも監督からも出てこなかった。しかし、その後のトレーニングマッチでも、山口とのプレシーズンマッチでも、ショートカウンターから失点している。そして2017年シーズンがどういう状況になったか、それはサポーターの皆さんもご存じのとおりだ。

だからこそ、宮崎産経大との試合で、本当の意味で何もさせなかった守備ができたことは非常に意味深い。そしてその要因が、トレーニングからずっと取り組んできた前からのハイプレス、奪い返された瞬間のプレッシャーが機能したことだった。「アグレッシブ」がキーワードであると城福浩監督は語っていたが、まさかここまで完璧な試合を演出するとは。彼らはボールを前に運ぶことすら、できなかったのだ。クロスもほぼゼロ。ラストパスも同様。そしてシュートも撃たれなかった。新戦力の櫛引一紀は、自身の対人能力を披露できないままに終わった。

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