【サンフレッチェ広島取材の軌跡】1999年11月27日対浦和戦/伝説・最も哀しいVゴール(後編)
圧倒的な浦和サポーターの声援。駒場スタジアムが破裂してしまいそうなほどのサポーターの集結。広島のサポーターもいるにはいるが、駒場の空気は赤一色だ。
俺たちが勝たせる。勝てば、J1に残れるんだ。
凄まじい「気」がピッチにおりてくる。その気持ちに後押しされ、浦和の選手たちは広島につかみかかった。
だが、気持ちは身体を前のめりにさぜるが、足がついていかない。一人一人をみれば、一騎当千である。しかし、苦境は人の気持ちをネガティブにさせ、強い気持ちを空回りさせる。前節、ストイコビッチを中心とした強い名古屋(セカンドステージ2位)と闘い打ちのめされた広島ではあったが、その名古屋の強いプレッシングからすれば、浦和のブレーは広島にとっては甘さが見えた。
11分、石井のロングフィード。小野がヘッドで落とす。走ってきたのは、ペギリスタインだ。
ダイレクト・シュート。強烈。ワッとなるスタンド。
しかし、ボールはサイドネットだ。
浦和は攻めるしかない。点をとるしかない。しかし、上村・フォックス・伊藤と広島の誇る3バックが、ポポヴィッチの穴を感じさせない守備を見せる。特にフォックスは、それまで若さ故の粗っぽさや集中を切らすシーンが多かったが、この試合は本来の能力を見事に発揮してみせた。強靱な1対1の強さ、的確なカバーリング。正確なパスと直接ゴールを狙えるFK。
「うーん、またフォックスか」
浦和番の記者の歯がみが続いたまま、前半を終えた。
ハーフタイム。携帯の速報を見る。
福岡は横浜FMに0-1とリードを許し、市原は0-0。まだ、全く予断は許さない。
浦和と広島、互いに気持ちの入った試合だ。得点こそ入っていないが、局面のぶつかりあい、走る熱量、戦う想い。サッカーの魅力の1つである創造性は感じないが、Jリーグ開幕の頃を想わせるひたむきさ。
身体が熱くなったまま、後半のキックオフ。
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