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【SIGMACLUB立ち読み版】城福浩監督ロングインタビュー/サポーターと、パートナーと、 そしてクラブと。みんなで 栄光を勝ち取るために

我々よりももっと、苦しんでいる人々がいる

 

……緊急事態宣言が発令されている中、どのように過ごされていますか。

城福●選手も僕らスタッフも、自分が感染しないこと、周りを感染させないということを留意しないといけない。なのでまず、なるべく外出しないように心がけています。今は、コーチングスタッフと選手の状況共有や自分たちができることをやり取りしています。後はジョギングと食事、時々自己啓発で1日を過ごしています。

……やり取りはオンラインで?

城福●そうですね。電話とかLINEとか。ZOOMもチームとして始めました。この前は、チームのスタッフや選手らと全員で、(オンラインで)繋げて話をしましたね。生活環境がそれぞれ違いますし、人と接触しない努力をすればするほど、孤独になります。だから、ああいう顔の見えるツールがあることは、すごくよかった。自分たちがサンフレッチェ広島の一員だということを確認するという意味でもね。もちろんこちらから伝えるべきこともありますが、それよりもみんなが顔を見合わせることで「チームの一員なんだ」と確認しながら情報を共有できるのは、いいことです。

……今回の事態は誰も予測できなかったことだと思いますが、チームを預かる監督として、どのように捉えていますか。

城福●我々はサッカー界の一員である前に、社会の一員であるわけです。もちろん、プロサッカーに携わる職業には意味があるものだとは思いますが、それ以前の「生きる」というところにおける重要な問題が発生しているという現実がある。いかに安全に生活ができるか、そこに寄与すること、貢献するべきだということは、受け入れないといけない。

この状況をどうやって乗り切っていくかという社会の要請に対し、少なくとも自分たちが足を引っ張ってはいけないんです。医療従事者の方々はものすごく頑張っておられるし、一方で飲食業や観光業など、あらゆる人たちが苦しんでいる。自分たちがその状況を理解しながら生活するというのは、すごく意味のあることだと思うんですね。

選手たちは今まで、サッカーをメインに生きてきて、プロフェッショナルという立場を勝ち取って、それを職業にできている。努力が実ったことは確かだし、ある意味では幸運な人間です。だからこそ、世の中で起こっている現実をしっかりと認識して生活しながら、自分の立場をもう一度確認して社会と向き合うことが大事だと思っています。

……仕事のできない状況にある方が多いわけですが、これは社会人としては非常に苦しい。サッカー選手にとっても、試合や練習ができないのは、仕事ができないことに等しいわけで、それは辛いことですよね。

城福●そうですね。まだ日程が明確になって目標もはっきりしているのであれば、様々な我慢もできる。やれることを努力しながら、その日を待つことができる。しかし、まだいろんなものが具体的に見えてこない中にいるとしても、今の生活の中で我慢し(来るべき日に向かって)準備することも仕事です。

もちろん、目標が見えてこない中で(我慢は)難しい。妻帯者であれば家族を守らないといけないし、独身者は独身者で、ブラジル人はブラジル人で非常に不安な状況もある。各々の生活の環境が違う。でも、目標が見えて来ない状況であったとしても、努力するしかないんです。我々以外の人たちは、もっともっと苦しい、難しい状況にあるわけだから。

……普段のオフとは状況が違う中で、準備しないといけない難しさはあります。

城福●確かに、身体を動かす場所がないような状況ですからね。自分の家の中でトレーニングしたり、可能であれば走れる場所を見つけて少し走ることしかない。ボールを蹴れるような場所はなかなかない。準備をしないといけないんだけど、身動きがとれないところもあると思いますね。

……でも、プロとしてやるべきことがある。

城福●繰り返しになりますが、僕らだけではなく世の中のみんなが苦しんでいるし、その中でも頑張っている人たちがいるわけです。そんな中で自分たちが「難しい」などと投げやりになっている場合ではないし、モチベーションが落ちている場合でもない。周りをしっかりと見て状況を把握しながら、自分たちのやるべきことをやる。

サンフレッチェ広島の選手たちは、それをやってくれていると思っています。サッカー界だけを見ても、日本だけでなく、全世界が同じような状況。それでも日本人の我々がやれないはずはない。特にサンフレッチェの選手たちは、自己管理がしっかりできる集団だと思っていますから。

……選手たちへの信頼は確立されています。

城福●はい。

 

大切なのは常に、フェアであること

……話は変わりますが、監督の今までのお仕事を拝見していますと、若い選手たちのアプローチに関して、細心の判断や関係性を持って接しておられますね。

城福●若い選手はとにかく今、動きたくて仕方がない。やればやるほど身についてくる年齢ですし、練習で追い込んでも回復できる力は持っている。今の彼らにそういう鍛錬の場がないことは、もったいないですよね。

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