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【SIGMACLUBNEWS】C大阪戦に向けて/主導権の奪い合い。

昨年のホームゲームでパトリックの同点ゴールを導いたのはハイネルのクロスから。今季も丸橋祐介との直接対決は、大きな見どころの一つ。

 

ロティーナ監督は冒険を嫌う現実主義者である。レアル・ソシエダやラ・コールニャ、ビジャレアルといった日本でも知られているスペインのクラブを率いてきた名将は、守備を徹底して組織化させることで結果を出してきた。ファンタジーなどの「フワッ」とした要素を信じることはない。目の前に起きていること、そしてその現象に通じる論理だけが全てだ。

東京ヴェルディ時代に彼の指導を受けた田村直也氏によれば、ロティーナ監督は徹底的に守備のポゼッションどりを指導。「無理なチャレンジをするぐらいなら行かない・ファールはしない・スライディングは最後まで我慢する」などの原則を守れば失点は減ると言い続けた。その上で、ポジション・ポゼッション(ボール支配)・ブログレッション(前進)という「三つのP」の重要性を説いた。その上で相手を徹底的に分析し、相手の立ち位置を考えた上でポジショニングを決定する。細かな決まり事を数多く用意し、それを厳密に遂行することを求める。そこに「創造性」のような個人に委託するような要素はない。

モダンなフットボールとは何かを考えた時、世界ではどんどん「クリエイティブ」よりも「ロジカル(論理性)」に傾いている。守備はもちろん攻撃においても、監督のシナリオどおりに動くことを選手は求められ、戦略・戦術の上にサッカーがあることが大前提だ。だが、果たしてそういうサッカーが魅力的かどうか、それはわからない。

攻守ともにデザインされた組織的なプレーは1994年のステージ優勝時に広島が表現していた。しかし、精密に設計された戦術を徹底して研究され、チャンピオンシップではヴェルディ川崎(現東京V)に完敗。ラモス瑠偉のループシュートが放物線を描いてネットに沈んだ時、組織だけでは勝てないことを痛感させられた。ロジックを磨き上げた手法だけでは最終的には頂点に立てない。グアルディオラが素晴らしい論理でチームを構成しようとも、最後の仕上げのところではハイレベルの「個人」が求められる。それは紛れもない現実だ。

厄介なことに、C大阪には個人能力の高い選手がいる。たとえば清武弘嗣であり、ベンチスタートが多いとはいえ柿谷曜一朗の才能は誰もが認めるところ。ブルーノ・メンデスも「持っている」選手だし、ロティーナ・タクティクスのキーマンといっていい丸橋祐介と松田陸の両サイドバックもそうだ。もちろん、都倉賢の高さ、奥埜博亮の抜け目なさも要注意である。組織力の高さだけでなく、いざとなれば個人での打開も可能なのがC大阪の強みだ。

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