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【SIGMACLUB NEWS】大迫敬介/教科書は林卓人

気のせいか、大迫敬介の笑顔が増えたような感覚すら、覚える。

もちろん、試合に出られなくなって嬉しいはずはない。悔しいに決まっている。サッカーを始めた頃から才能を評価され、試合に出られないという状況そのものをほとんど経験したことがない。プロに入っても2年目でレギュラーをつかみ、日本代表にも選出された。そういう人生を歩いてきた男にとって生まれて初めて「一度つかんだポジションを手放す」という経験を余儀なくされた。悔しくないはずがない。

そのきっかけは言うまでもなく、大分戦でのミス。プロに入って初めて、自らのミスが敗戦に繋がった。それだけでも悔しいのに、次の鳥栖戦ではベンチスタート。その状況が3試合、続いた。城福浩監督の「大迫がミスをしたから交代させたのではなく、林卓人が好調だから使った」という言葉が、彼にどう響いたか。大迫敬介がどうこうではなく、林卓人を選択した。その言葉の意味を考えれば考えるほど、若者にとっては厳しい。

それでも、彼はずっと笑顔でトレーニングに熱中した。最後までピッチに残り、シュートを受け続ける姿も変わらない。少しでも腐ったり、モチベーションを落としたりすれば、全てプレーに現れるのがサッカーの世界。しかし、大迫にはそれがなかった。

「今年に入ってから、いいこともあったけれど、悔しい想いをしてきた」

大迫の言葉である。

「でも、自分が試合に出ていない時に準備しているものを、Bチームで表現したいと思ってやっていました。若い選手がチームを活性化させて、いい方向に持っていければいいと思って。それに……」

言葉をつなぐ。

「自分が試合に出ていた時、他のGKが気持ちを落とすことなく練習から取り組んでいたことで、いい雰囲気もつくれていました。僕がピッチに出ていく時も、他のGKが最高の状況で送り出してくれた。だからこそ、僕が試合に出ていない時に、ここまでやってもらったことを返したい。出ていない時に準備を整えることで、(林)卓人さんのようにチャンスが来た時に出ていっていいプレーができる。そういう想いで、ずっと準備をしていきたい」

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