【PRIDE OF HIROSHIMA】永井龍/誰よりもゴールを求める
戦術的にも彼の存在は大きな可能性を持つ。
「敵陣でサッカーをする」というチームの理想を実現するには、敵陣でボールを失った時の切り替えはもちろんのこと、相手の最終ラインに対して厳しいチェックに行く必要があるわけだ。それは誰にでもできることではない。前線からのプレスは守備ではなく、実は攻撃の戦術でもあるのだが、そこに向けての力を捧ぐとゴール前でパワーが発揮できないアタッカーも確かにいる。
だからこそ、攻撃的守備ができる無尽蔵のパワーを持つ永井の存在は貴重だ。彼が起点となって前線から走り、相手の攻撃を限定させることによって次のボールを我が物にする。そのサイクルがはまっていけば自然と最終ラインは押し上がり、セカンドボールを回収して押し込むサッカーができる。永井の苦手とするボールの収め役を他の選手が引き受ければ、彼は常に前を向いてプレーできるわけで、そういう調整ができれば彼のパワーは必ず発揮できる。
上記の文章は、以前、永井龍について書き記した言葉だ。当時はおそらく、多くの人々が「そうは言っても」と思ったに違いない。しかし現実、大分戦や鳥栖戦での彼のパワフルなスプリントがチームを動かし、相手に何もさせずに終わった。一方、永井が出なかったG大阪戦は最終ラインやGKから縦パスが出て、失点の憂き目を見ている。
自分の考えが正解だったというつもりはない。実際、ここまで結果が出るとは、記者自身が驚いている。
しかも鳥栖戦ではブラジル人選手をベンチに置いたままで3得点。永井の活躍とチームの機能性に、ブラジル人選手たちも複雑な表情を見せたり、不満を示したり。しかし、今週のトレーニングでドウグラス・ヴィエイラが激しい気迫でDFを追い回したり、レアンドロ・ペレイラがこれまでとは次元の違うスプリントを見せたり。そういう姿を見ていると「永井効果」は試合だけでなく、チームの雰囲気をピリッとさせてレベルアップさせる効果もあった。
ただ、永井自身は全く満足していない。80分でスプリント31回。サポーターからの万雷の拍手。誰もが認める貢献者。しかし、永井にその話を振っても全く、だ。
「最低限の自分のプレーはできましたが、やっぱりゴールを決めないとFWとしての評価はされない。自分の課題だし、周りが点をとっている姿を見て、1トップの自分が点をとらないといけないと、感じています。鳥栖戦では幻のゴールもありましたが、ああいうシーンもプラスにとらえて、ゴールが近づいていると思っています。ああいう(ゴールに近い)場所に飛び込んでいけば、いつかは」
彼はストライカーだ。ストライカーとは、得点をとらないと満足できない。自分の存在意義を実感することはできない。
「アシストよりもPK」
明確にそう言ったこともある。
もちろん、攻撃的な守備での奮戦は誰もが認めているし、彼自身にも自負がある。だが、やはりゴールという果実をもぎとらないと、ストライカーの胸はスッキリとしない。
「鳥栖戦では(東)シュンキやチャジ(茶島)から早目にクロスが入っている」
城福浩監督は指摘する。
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