【WEリーグ】サンフレッチェ広島女子チーム、ゼロからの船出。
日本初となるプロの女子サッカーリーグ、そのオリジナルメンバーに選出されたというのに、サンフレッチェ広島の記者会見場には華やいだ雰囲気はなかった。クラブ側からは歓喜というよりも緊張が先に立ち、笑顔も少ない。
「勿論嬉しいのですが、これからのことを考えると、ゼロからクラブをつくっていかなければいけない立場。大変厳しい道が待っております。それを思うと、身の引き締まる想いというのが本音です」
仙田信吾社長の言葉が、クラブの雰囲気を正しく表現している。(会見全文はこちらでご覧下さい)
まさに、ゼロからのスタート。
他の参画クラブは母体となる女子チームをもっているが、広島には今、何もない。
3部相当のリーグに所属しているアンジュヴィオレ広島が広島の女子サッカーの歴史を担ってきた。しかし、このチームをそのまま引き継ぐことはない。
「女子のプロサッカーリーグは日本代表選手クラスが参加してくるトップリーグ。そこに我々がチャレンジしていくためには、(既存のチームを引き継ぐのではなく)ゼロからやらなければいけない」と判断した。そこはアンジュヴィオレ広島にも理解を頂いた仙田社長は言う。
選手・監督の選定・獲得もこれから。正式なチーム名も、ユニフォームも、そしてスタジアムや練習場も決まっていない。
どういう環境を整え、そのためにどれほどの予算を割いていくか、そこも発表できる段階にはなかった。
「他の参入クラブがベースとなる女子チームを既に持っている状況に対し、当クラブは選手も監督もコーチも今から、まさにゼロからのスタートになります。しかしながらフロント・スタッフには女子サッカーで大学日本一を経験した社員や、他にも数名サッカー経験者が所属しておりますし、男子チームで確立したノウハウもありますので、それらをフルに活用して日本最高峰のリーグで戦うチームつくりをしていきたいと思っております」
久保允誉会長の言葉である。ただ会長は一方で現状をこう説明した。
「ゼロからのスタートというところで、今からどういう運営、組織、男子・女子の組織にしていくか、予算組みをどうしていくのか。課題を解決するために大きな決定事項をしなければいけないところがあります。まだスポンサーも全然決まっていない状況ですので、2021年の開幕に向けてスピードを上げてやっていきたいと思っています」
開幕は来年9月。あと1年で全てを構築しないといけない。その困難さに、サンフレッチェ広島はあえて、挑戦する。
まったくゼロからのスタートといえば、清水エスパルスを思い起こす。
清水FCという静岡県リーグの母体チームがあったとはいえ、運営会社が設立されたのは1991年5月。
そこから日産の長谷川健太、読売の堀池巧、ヤマハからは大榎克己とかつて清水東三羽烏と呼ばれた名選手たちを獲得。他にも、三浦泰年や澤登正朗といった地元出身の選手たちも加入が決まり、スタジアムも完成したばかりの日本平運動公園球技場を使用することができた。
運営会社設立の1年後に行われた第1回ナビスコカップでは、いきなり決勝に進出。読売ヴェルディ(現東京ヴェルディ)に敗れたが大躍進を研げ、翌年のリーグ開幕でもファーストステージ4位、セカンドステージは2位と健闘。一気に強豪の仲間入りを果たしている。
この時の清水が見せたチームのビルドアップのやり方は、参考になるかもしれない。
では、広島はどうか。
例えば元日本代表GKの山根恵里奈は広島出身。サンフレッチェの女子スクールに通っていた経緯もあるが、彼女は今回、WEリーグ参画を決めた千葉レディースのメンバー。広島大出身初のなでしこリーグの選手となった齋原みず稀もいるが、彼女も今は愛媛FCレディースの選手だ。
現実的には今、なでしこリーグで活躍している選手たちに移籍交渉をすることになるだろうが、現在はまだ移籍期間ではなく、交渉の制限がある時期。少なくとも最終節(11月14日)までは身動きがなかなかとりづらいのが現実だろう。
またかつての清水のように、地元出身の一流選手がズラリといるわけではない。なでしこジャパンのメンバーにしても、ほぼ全員がWEリーグ参画クラブの所属で、そうでないのはFW上野真実(愛媛)くらい。
この現状をみれば、チーム構成がいかに厳しいかがわかる。
何よりも課題は、チームの環境をどう整備するかだろう。
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