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【SIGMACLUB NEWS】池田誠剛フィジカルコーチと大迫敬介の会話/身体は脳が司る

珍しい光景ではあった。

池田誠剛フィジカルコーチが居残り練習を終えた大迫敬介に声をかけ、じっくりと話し込んでいたのだ。

その時間は約30分。横浜FM戦の2日前、広島広域公園補助競技場の美しい芝生の上に腰をおろし、2人は言葉をかわしていた。

池田コーチが個別の選手に声をかける場面はあまりない光景だ。居残り練習には常に付き合い、肉体に関する指導は全て任されているフィジカルコーチの魁。指導の一環として言葉をかけることはあるが、そういう時も彼は立って、身振り手振りを交えて行う。

なのに彼は、大迫に対してはずっと、座って話をしていた。

気になった。

今の大迫にフィジカルコーチが何を語っていたのか。

もしかしたら。肉体に何か、問題を抱えているのか。

「いいかサコ、お前のストロングを忘れてはいけないんだぞ」

この時、池田誠剛が若きGKに話していたのは、ほぼこのテーマに尽きる。

ポジションを奪いに行く時は、自身の強みを全面的に活かそうとするものだ。

自分にはこれができる。この部分では、誰にも負けない。

そういうポジティブなエネルギーが発散されている状態になった選手は、高く評価される。

今の広島でいえば、エゼキエウが典型だ。

しかし、レギュラーの座を奪われた側は、どういう心境になるか。

自分に何が足りないのか。

何を修正すれば、試合に出られるのか。

想いは内側へ、内側へと向けられ、プレーが縮こまって見えた。

若者が陥りがちな、負のスパイラルである。

「僕もこの世界は長いですからね。いろんなケースを見てきましたから」

そう言って池田コーチは笑った。

「レギュラーの座を明け渡すと、多くの選手は修正点を探そうとして、自分の力を否定しがちになる。ネガティブな発想ですね」

ポジションを失うという現実は、その選手に大きなショックを与える。当然、平静ではいられない。

自分を責め、否定する。その繰り返しによって、脳は疲弊する。

「身体は脳が全て。頭の中が支配しているんです。ネガティブな発想が続くと身体まで小さくなってしまうもの。こういう時は、できるだけいいことだけを考えることが大切んなんですよ」

大迫敬介に巨大な才能が秘められていることは、誰も否定できない。しかし、才能だけでやっていけるほど、プロの世界は甘くない。

経験が足りない時もある。単純なミスで負けてしまうこともある。

その繰り返しから、どん底にたたき落とされることもある。

そういう時だからこそ、自分のストロングを思い出せ。

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