2度、膝をついても立ち上がった/広島2-2札幌
やられたら、やり返せ。
ドラマ「半沢直樹」の名台詞だが、対戦型スポーツで勝利するには絶対に忘れてはいけないスピリットだ。
殴られっぱなしでいいのか。やられっぱなしで、闘っていると言えるのか。
そのスピリットを全員が持っているか。
持っていると信じたい。しかし、それは結果で語らないと、サポーターには届かない。
53分、広島は二度目のダウンを喫した。
警戒していたセットプレー。福森晃人の見事なキック。川辺駿との争いの中で見事な駆け引きを示してフリーになった宮澤裕樹のスキル。全体にデザインされたセットプレーは広島時代のミハイロ・ペトロヴィッチのイメージではないが、いずれにしても失点を喫したことは間違いない。
サッカーでの2点差は重い。
よく「2点差は危険なスコア」と言われるし、確かにここから追いついたり、逆転したりするドラマはある。だが、統計学的にいえば、やはり2点差をつけたチームの勝率は圧倒的に高い。それはやる側も観る側もわかっている。だからこそ、2点差を追いつくことが目立ち、そして称賛される。
サッカーでは、ゴールそのものが奇跡に近い。だからこそ、2点差を追いつくことがどれほど至難か、サッカーを少しでも見ていれば誰もが想う。
コーナーキックからの失点で2点差となった時、多くの人たちが絶望の淵に追い込まれた。
これまでサンフレッチェ広島の試合をずっと見ていて、失点した後は下を向き、攻めないといけないのに攻め込まれてしまったシーンを何度も見てきた。8月19日の対FC東京戦、9月13日の対川崎F戦、そして9月27日の対G大阪戦。さらに7月8日の対大分戦。チームがそうなのだから、サポーターの空気もそうなってしまいがちになる。
だが、人はいつまでも同じ場所に立ってはいない。
成長したい、もっと強くなりたい。
そう願い、必死に闘っている男たちであれば、必ず違う場所にたどり着く。たとえ、時間がかかったとしても。
2点目を失った直後のキックオフ。レアンドロ・ペレイラが荒木隼人までボールを戻す。野上結貴、荒木、青山敏弘。ゆったりとつなぐ。
札幌は引いてこない。今季のやり方どおり、前へとプレッシャーをかけにくる。
青山の選択は、タッチライン際に開いた佐々木翔だった。
対応したのはアンデルソン・ロペスだったことが、佐々木にとってのメリットだったかもしれない。類い稀なフィジカル能力を持ち、ゴール前では抜群の力を発揮する彼だが、広島時代から守備には難があった。札幌では意識はかなり改善されているが、それでも守備の技術やスキルは短時間で上手くはならない。
1対1の局面。アンデルソン・ロペスが寄せてくる。その動きの逆をつき、佐々木は前へとボールを運んだ。アタッカーは対応できない。そのまま、佐々木は彼を置いていった。
浅野雄也は佐々木がロペスをかわした時、既に中央より左よりにいた。レアンドロ・ペレイラにはキム・ヨンテ、森島司には田中駿汰、そして浅野には福森。マンツーマンである。
佐々木が運ぶ。浅野、福森の背中をとる動きを見せてから前に出た。
大外の森島を狙う手もあった。だが、キャプテンはより攻撃的な手を選択する。
斜めに入ってきた浅野は1番前に出ていた。つまり、最もゴールに近い選手を選んだのだ。パスカットされるリスクはある。しかし、それでも彼は決断した。
見事にパスは通る。この瞬間、レアンドロ・ペレイラは中へと切り込む。浅野を信じて、ラストパスを信じて。
浅野には福森が寄せていた。さらにキム・ミンテもレアンドロ・ペレイラのマークを捨てて、ボールをとりに行った。
難しい状況。しかし、浅野はここでビッグプレーを見せる。
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