選手のリストアップは進んでいる/サンフレッチェ広島女子サッカーチーム中村伸監督記者会見より
「おおーっ、おおっー」
もう何年前か忘れてしまったが、あれはまだ、森保一監督が指揮をとっていた頃だと思う。
ノエビアスタジアム神戸の記者席で取材していた時、横の方から大きな叫び声が聞こえた。
「いいぞっ」「スペースがあいてるっ」「おいっ、それはないだろっ」
声の方向を見た。紫のジャージを着ていた。広島のコーチだ。
手元にシートがあり、時折チェックを付けている。スカウティングの仕事だろう。だが、彼はピッチ上でのパフォーマンスを見ながら、気持ちは戦っていた。ピッチに立つ選手たちと共に。
サンフレッチェ広島女子サッカーチーム初代監督に就任した中村伸監督のエピソードである。
情熱に満ちた指導は、彼の真骨頂だ。だが一方で、彼は声を聞くことができる。選手たちの言葉に耳を傾けることができる。
トップチームのコーチに就任して以降、中村監督はたくさんの選手たちの言葉を聞き続けた。
川辺駿も野津田岳人も、森島司も、他の若者たちも。
「シンさん」と言いながら、ずっと自分の想いを正直にぶつけていた。
監督は監督なりの解決策も提示していたようだが、何よりも大切なのは「話を聞ける」ことである。
指導者にとって最も重要な資質の一つは、選手の言葉に耳を傾けることができるかどうか。
特別な何かを言う必要はない。ただ、話を聞くだけでいいのだ。
それだけで、人は救われることがある。
2013年、病に陥った森﨑浩司が森保一にずっと話を聞いてもらっていたことで、「辛い状況に陥った、そんな自分も好きだなと考えてみては」というさりげないアドバイスが心に響いた。
もし半年間にわたって、浩司の辛い話を森保一がずっと聞いていなかったとしたら、2015年に浩司が放った松本山雅戦のFKゴールはなかった。彼の引退は2016年よりもずっと前になっていただろうし、今のアンバサダーとしての活躍もなかったかもしれない。
大切なのは、ただただ、話を聞くという姿勢だ。
苦しんでいる人間にとって、その苦しみから抜け出す答えは、実はわかっている。
その答えは見たくはないものかもしれないし、自分にとって厳しいものかもしれない。
ところが、話を聞いてもらっているうちに、眼をそらしていた結論が変わり、ポジティブになっていく可能性もある。聞いてくれたことで共感性が高まり、発想が前に向かう可能性もある。
監督としては、まだまだ無名かもしれない。しかし、情熱的で聞き上手な初代監督が一気に名を為す可能性もある。記念すべき創設年度は、何が起きてもおかしくない。
さて、その中村伸監督の就任会見が本日、行われた。その全文はサンフレッチェ広島の公式サイトにアップされているので、ぜひご参照いただきたい。
そこで監督に、選手たちの獲得状況を聞いてみた。
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