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【SIGMAの戦士】長沼洋一/チャンスメイカーよりもストライカー?

0-5。

結果だけみたら、惨敗というしかない。

しかし、内容だけを見たら、リーグ戦時の3-3よりも未来が感じられた戦いでもあった。あの時は全く、流れの中での決定的シーンが見いだせなかったが、今回は違う。

勝負は紙一重のところで決まる。違うスコアで広島が勝点をとれる可能性もあった。特に前半、鮎川峻や柴﨑晃誠のシュートが決まって先制していれば、状況は全く変わったかもしれない。

もちろん、広島の痛いところをつく横浜FMの精密な戦術と、仲川輝人やエウベルといった質の高いウイングの存在を考えたら、彼らを抑えることは一筋縄ではいかない。だが、少なくとも「何もできなかった」などと評価されることはなかっただろう。0-5というスコアの前では何を言っても届かない。

勝負の世界に「たられば」はない。

あのシュートが決まっていたらとか、もう1mラインをあげられていたらとか、もっといい距離感で守備ができていたらとか。山ほど出てくる「たられば」は、「できなかったよね」の一言で終わってしまう。

ただ、次の試合、来月の戦い、今季の未来を考えるのであれば、「たられば」も悪くはない。その試合だけに関して言えば「言い訳」だが、未来に向けては「課題抽出」と「収穫」にも繋がる。

城福浩監督は試合後の会見で「あえて収穫を」という質問に対して、具体的な言及はなかった。0-5という現実を受け、「この屈辱によって、次に向かうパワーがえられた」と語るにとどめるのみ。だが長沼洋一に対して質問が飛ぶと、「局面で戦ってくれた。前半の決定機を決めてくれれば良かったとは思いますが、彼の特長をピッチで表現してくれたとは感じています」と言葉を発している。

間違いなく、長沼洋一は収穫の1つだ。ただ、彼に関しては今季、ずっと思っていたことがある。

あれ?チャンスメイカーではなかったか?もしかして、ストライカー?

キャンプのトレーニングマッチから、彼が目立ったシーンは相手の守備陣をドリブルで剥がすことよりも、ゴールだ。

松本戦でのヘディングシュートは、彼自身も「決めた記憶にない」というもの。ただ、「たまたまです」というわりには、見事なヘディングだった。178㎝と決して高くはないが、強靱なバネを利したジャンプは到達点が高く、センターラインの筋力が強いからヘッドもぶれない。

磐田戦ではカットインからのドリブルからシュートを決めているが、ドリブルで相手を剥がすというよりは、タイミングを図りながら狭いスペースを通したシュートの上手さが際だった。完全非公開となった試合も含め、プレシーズンで4得点。一方、アシストはゼロ。この数字が、彼の才能を物語っているような感じがしてならない。

というか、もしかしたら彼の才能をこれまで、見誤っていたのかもしれない。

ユースの時から、長沼は好きなプレーにこだわってきた。ドリブルやスルーパス。「得点よりもアシストが好き」と言って憚らなかった。だがプロでは、シャドーでのプレーがうまくいかない。彼の才能をなんとかして活かしたいと考えた当時の森保一監督と横内昭展ヘッドコーチは、長沼をサイドにコンバートさせた。守備の負担は増えるが、サイドは基本的には1対1。長沼のドリブルやスピードも、このポジションなら生きると考えたのだ。

その判断が間違っていたとは思えない。実際、愛媛ではサイドで評価され、ポジションを勝ち取った。だが、広島に戻ってきてからのプレーを見ると、本質はやはりセンター。それも「チャンスメイカー」というよりも「ストライカー」に近いのではないかと思えてならない。

長沼にはまだ、その自覚は薄い。得点を決めても「たまたまです」と言うコメントが出てくる。広島ユースの頃から、長沼はそれほど得点にこだわってこなかった。

だが一方で「数字を残したい」という強い欲求も芽生えている。それは今、彼がプレーしているのが3バックのウイングバックではなく、4バックの2列目であることが大きい。

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