ストライカー・長沼洋一/広島2-1清水
自分のことを1番、わかっていないのは実は、自分である。
筆者も長く人間をやっているが、未だに自分のことがわからない。「あなたには、こういうところがある」と指摘され、赤面したり自信をつけたり失ったり。そういう生活がまだ、続いている。
そもそも自分自身がライターとして生計を立てていくなんて、20代前半の頃は想像もしていなかった。「あなたの文章を読んだら、すごく繊細でロマンチストな感じがする。顔は違うけど」と揶揄されたことがあったが、そういう評価を受けることもまた、思ったこともなかった。
やりたいこととやれることが違うと感じることもある。コピーライターをやっている頃、「プール、冷えてます」というとしまえんの名作コピー(岡田直也氏作)に憧れ、「サラリーマンという仕事はありません」(糸井重里氏作)という切れ味鋭いキャッチコピーが書けるようになりたかったが、それは自分には無理だとわかったのは相当に後のこと。頑張ればできると思っていたが、自分の能力はそこにはなかった。今も、タイトルワークが下手くそであり、それが悩みの1つである。
サッカー選手も同様だ。成功する選手とそうでない選手の分かれ道は、この「自分のことをわかっているか、どうか」という難しさをクリアできているかどうか、にあるのではないか。
たとえば佐藤寿人は、自分自身がドリブラーでもパッサーでもなくストライカーとしての能力が高いことを早くから自覚していた。だからこそ、どうやったら点をとれるかを突き詰めて考え、動きのキレが必要だとわかれば自身でトレーニングギアを購入し、トレーニングを続けた。中学生の時にはもう、ストライカーとして生きることだけに特化していたから、その蓄積は膨大になった。
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