SIGMACLUBweb

ジュニオール・サントス、覚醒への道/広島2-1G大阪

個人的な思いで書けば、Man of the Matchは佐々木翔だと考える。

先制点を奪った破壊的なヘッドだけでなく、パトリックをほぼ完璧に潰した守備も素晴らしい。89分に撃たれたレアンドロ・ペレイラのシュートに対するブロックも、彼ならでは。ハイネルからボールを奪ったペレイラをもしそのままフリーにしておけば、極めて危険。レアンドロ・ペレイラのことを知っているからこそ、PAすぐ外のシュートが彼の得意な距離であることはわかっている。そこを敏感に感じて果敢にシュートブロックにいった佐々木の勇気と決断は、高く評価されるべきただ。

だが一方で、どうしてもジュニオール・サントスに対する想いは、抑えきれない。

先発メンバーを耳にした時、正直、大丈夫かと心配になった。今の広島は、守備でリズムをつくる。鳥栖戦では鮎川峻と永井龍が守備でいいリズムをつくったことが、勝点1につながった。ジュニオール・サントスに、そういう守備ができるのか。ここまでの試合を見ていたら、当然、疑問符がつく。

といって、攻撃で迫力をつくれていたか。それも違う。ドウグラス・ヴィエイラのようにボールを保持してのポストプレーはできないし、エゼキエウのようなアイディアも発揮していない。レアンドロ・ペレイラのような強烈なゴールも、未だ炸裂していない。オフ・ザ・ボールでスペースをつくる仕事もできない。

可能性はもちろんある。だが、今は可能性よりも現実と向き合う時。彼はスーパーサブで力を発揮してもらうことが1番いいのではと思っていた。

だが、城福浩監督は決意を込めて、彼をピッチに送り出す。失敗すれば、大きな批判が待ち受ける。今よりもさらに厳しい状況も待っている。しかし、「彼を戦力化できないのは、自分の指導力不足」と認識し、毎日のようにジュニオール・サントスと言葉をかわし、やるべきことを訴え、鳥栖戦ではあえて彼を先発から外して奮起を促した。

「持っている能力は、まだ開発されていない。それを引き出せば、チームには大きなパワーとなる」

信念、いやもっと強い意志の力が、そして生真面目で必死に努力を重ねるジュニオール・サントスへの愛情が、指揮官を突き動かした。鮎川峻の凄まじい努力を見た指揮官が、「彼を戦力化したい」と言った言葉に現れたように。

(残り 2408文字/全文: 3349文字)

ユーザー登録と購読手続が完了するとお読みいただけます。

ウェブマガジンのご案内

日本サッカーの全てがここに。【新登場】タグマ!サッカーパック

会員の方は、ログインしてください。

« 次の記事
前の記事 »

ページ先頭へ