疲労を言い訳にしない選手たちだからこそ/広島0-1徳島
個人的な話を書くことを少し、お許し願いたい。
先週の水曜日、SIGMACLUBの校了だった。校了とは、雑誌の印刷に至るまでの最終工程であり、これが終了するともう修正はできない。そういう重要な仕事をやりきって大阪に向かい、そしてG大阪戦を取材した。
結果は勝利。だが、身体がもう動かない。頭も、まるで働かない。
原稿を書かなきゃ。
そんな意志はあった。だが、パソコンの前に座っても、全く書けない。
次の日、午後から定期購読の読者のみなさまへ、SIGMACLUBを発送しなければならない。なので、午前中になんとか原稿を書きたいと思ったし、そういうスケジュールを組んでいた。だが、頭が全くといって、回ってくれない。試合は何度も映像で見た。ジュニオール・サントスで書こうとも思った。でも、書きだしが全くもって浮かんでこない。
そのうち、頭痛もし始めた。体温は正常。咳などの症状もない。
「いつものやつだ」
寝不足と疲労が極限に達すると、頭痛として危険信号を送ってくれる。休むしか、解決策はない。しかし、発送という〆切時間が限られた仕事がある以上、休めない。
4月3日の対G大阪戦からスタートした17連戦、その全てに帯同中だ。その間、SIGMACLUBの校了を2度、経験した。この42日間、僕とカメラマンには1日の休みもない。チームが休みの時も、僕らは原稿がある。そして移動。広島→横浜→広島→名古屋→静岡→川崎→広島→静岡→神戸→広島→鳥栖→大阪→広島。42日間でこれだけの移動である。正直、頭が回らなくなった。
「それはでも、わかっていたことでしょ」
それは違う。
4月14日の対名古屋戦と5月12日の対G大阪戦はACLの急な日程変更のために組み込まれた。本来であればここで、チームも、そして自分も休息と練習(自分にとっては取材)という名のインプットができるはずだった。
だが、ここに日程を組み込まれたことにより、休息はとれなくなってしまった。
それでも、プロであれば、結果を出さないといけない。
そういう厳しさは、存在する。
でも、人間の肉体と頭脳は、ずっと張り詰めた状態では力を発揮できない構造となっている。ブラック企業が問題なのは、この当たり前の構造を無視し、気持ちとか気合いとか、そういうフワッとした非科学的なことで解決しようと強要するからだ。
それに当初からこういう予定がわかっていたとしても、どういう対処ができるのか。ターンオーバー?それは広島も取り入れている。というか、取り入れざるをえない。メンバーも頻繁に入れ替えている。それによってコンビネーションなどに問題を抱えたとしても、やらざるを得ない。だが、それだけでは無理だ。
2012・2013年と連覇を続けた翌年、オーストラリアのセントラルコーストで森保一監督(当時)は悲痛な声をあげた時のことを思い出す。
「選手はロボットじゃないんだ。人間なんだ。このままでは、選手が壊れてしまう」
中2日で広島からオーストラリアまで移動し、ACLを戦って逆転負けを喫したその日の夜、南十字星の輝く下でリーグ連覇を果たしていた指揮官が声をあげた。ミハイロ・ペトロヴィッチ時代から組織を磨きあげ、戦術的な成熟期にあったチームの指揮官の叫びを聞いていたのは、筆者だけだった。
「もちろん、負けたことは監督である自分の責任。反省もある。決められたレギュレーションでやらないといけないことも、わかっている。その上であえて、何度も言いたい。このままでは、選手は壊れてしまう」
あの時のチームですら、疲労に対して為す術はなかった。全ての戦術・技術のベースにコンディションにある。その現実を無視して「やれることはあった」などと指摘する意見は、兵糧がなくなって飢えてしまった武士たちに「飢えているのはわかるが、なんとか工夫して闘え」と言うようなものだ。
この時は5連戦で一旦、途切れた。しかし今年は17連戦。蓄積疲労は半端ない。
そして、もっとも大きな問題は、試合が続いて休息がとれないことに加え、トレーニングができないことにある。
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